魚種交替と最適漁獲

水産学会97年秋(広島)

非平衡競争系(イワシ−サバ系)の魚種交替を考慮した最適漁獲方針

松田裕之(東大海洋研)

 

【目的】イワシ類やサバなどの浮魚類は餌を巡って競争し、それらの資源量は短期的にも長期的にも変動している。これらの魚種の総漁獲量の長期平均を増やすような漁獲方針を検討する。

【方法】マイワシ、マサバ、カタクチイワシが3すくみ関係により競争し、永続変動している数理模型を考える。(A)各種の資源量に比例して漁獲する場合、(B)漁獲量が資源量の増加とともに飽和する場合、(C)比較的高水準にある魚種を集中して利用する場合を考え、漁業が資源変動幅、各種資源量や総漁獲量の幾何平均に及ぼす影響を検討する。

【結果】これら3つの漁獲方針の間で、資源変動幅を狭め、資源の減少期の乱獲を防止し、総漁獲量を増やす上で、(C)の方針(スイッチング漁獲)が最も効果的であり、(A)の方針が最も逆効果であった。ただし、各魚種ごとの漁獲量の年変動は(C)が最も大きくなった。現実は(A)に近いと考えられ、最も多量に蛋白源を供給できるプランクトン食浮魚類の漁獲量は今後も増やすことができる。そのためには、漁獲物の魚種交替に対応できる市場づくりが重要である。