達成目標 研究体制 2年目までの成果 更新(文責 松田裕之)
現状と問題点 地域生態系の保全・再生事業においては、目標設定をめぐってしばしば意見の対立がある。本研究では、「全野生種を存続させる」という基本目標と、事業立案から合意形成・事業実施の各段階において保全・再生事業が守るべき諸原則を提起し、これらの目標・原則によって、意見の対立をいかに解消しえるかを検討する。合意形成には、基本目標が達成できるという保証が必要なので、基本目標を達成するためのモニタリング技術(調査方法と評価モデル)を開発する。
研究概要
(1)基本目標と保全・再生事業が守るべき諸原則に関する研究 基本目標と諸原則を提起し、専門家に意見を聞き、対立点の社会的経済的背景を検討し,合意形成に至る条件を各事例に即して検討し、幅広い支持が得られる基本目標と保全・復元の原則を確立する。
(2)3つのモデル地域におけるモニタリング技術の開発 ある地域の健全な生態系を維持するには,希少種だけでなく,植物・水生生物・哺乳類の全野生種の保全を図るべきである。九大移転用地では、植物・水生生物・哺乳類の全野生種を対象とするモニタリング技術を開発する。深泥池では、外来魚の駆除・集水域の管理事業を実施する場合のモニタリング技術を開発する。屋久島では、シカの食害が深刻化した地域において、シカと植物種の両方をモニタリングし、シカの個体数管理と植物種の保全管理を統合する技術を開発する。
(3)自然再生ハンドブック編集による総合化・体系化 (1)(2)の成果をもとに自然再生ハンドブックを編集し、得られた知見を総合化・体系化するとともに、行政において標準的に利用できるガイドブックを整備する。
各年度の研究・技術開発の達成目標
○ 平成16年度 保全・再生事業の基本目標と諸原則を提唱する。九大移転用地で全野生種について、絶滅リスクを評価する。深泥池では、外来魚根絶のための駆除努力量を決定し、水循環評価のための基礎データを得る。屋久島では、食害によって絶滅リスクが増大している植物種を選定する。
○ 平成17年度 保全・再生事業の基本目標と諸原則を修正する。九大移転用地では、土壌種子の多様性を評価する。深泥池では、外来魚が根絶できるかどうかを検証し、深泥池の水質に対する諸要因の効果を評価する。屋久島では、シカ防護柵によって、絶滅危惧植物種の個体数がどの程度回復するかを評価する。
○ 平成18年度 九大移転用地では、全野生種モニタリングモデルを完成させる。深泥池では、外来魚駆除によって在来種がいかに回復したかを評価し、池の生態系管理プログラムを提唱する。屋久島では、シカと植物が共存できるように、ヤクシカ管理・生態系管理計画を策定する。3年間の研究成果をまとめて、自然再生ハンドブックを編集する。
研究の成果及び期待される効果
@研究成果 地域生態系の保全・再生事業において広く合意できる目標・原則を設定し、これらの目標・原則にもとづく植物・水生生物・哺乳類モニタリングのための標準モデル・プログラムを整備する。
A期待される効果 保全・自然再生事業に明確な指針を与えることが期待できる。効果は、本研究完了後に大きなものとなるが、随時成果を公表することにより、研究開発を進める段階でも期待できる。
サブテーマ | 研究開発代表者・分担者 |
全体の総括および自然再生技術に関するレビュー | 九州大学大学院 理学研究院 矢原徹一 |
九州大学新キャンパスをモデルとした全生態系保全技術に関する研究 | 九州大学大学院 理学研究院 矢原徹一 ひらめき |
深泥池をモデルとした水域・集水域の生態系管理手法に関する研究 | 京都大学 防災研究所 竹門康弘 |
屋久島をモデルとした陸域の生態系管理手法に関する研究 | 横浜国立大学大学院 環境情報研究院 松田裕之 |
北海道大学大学院 文学研究科 立澤史郎 | |
自然環境研究センター 常田邦彦 |
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