昨年は災害の多い年でした.
横浜国立大学に転任してから1年余り,21世紀COE(研究拠点)「生物・生態環境リスクマネジメント」の理念・方法作りを担当し,また生態学会生態系管理専門委員会で「自然再生事業に望まれる諸原則と方法(案)」を起草し,生態系リスク管理の方法論作りに携わりました.また,生態学会では「生態学会の目指すところ」というパネル討論に参加したり,鬼頭秀一氏ら環境倫理学者と釧路,札幌,東京,大阪で議論を重ねました.11月には琵琶湖で長谷川眞理子氏らと「経済学と生態学」と題するJSTフォーラムを企画し,経済学者と議論しました.
5月にVancouverで開かれた第4回世界水産学会議に招待され,生態系保全に配慮した漁獲量増加の可能性について発表,討論を行いました.第5回会議は2008年に横浜で開かれることになりました.10月20日には太平洋海洋科学機構(PICES)年会がホノルルで開かれ,生態系モデルに対して辛口の招待講演を行いました.直後の23日には東アジア生態学連合第1回会議が韓国木浦で開かれ,セッション企画者として参加しました.ハワイから成田に戻り,2時間滞在してソウルに向かう強行日程で,バスでホテルに到着したのは深夜1時過ぎでした.バス時刻表も知らずにソウルに向かい,言葉がわからず,たどり着いたのは奇跡的でした.10月にはMyers教授の要請で京都でCoMLのF-MAP/NaGISA合同会議を企画しました.1月には岡崎の国際シンポ「絶滅の生物学」に招待されました.
8月には知床世界遺産候補地科学委員として知床を訪れ,矢原徹一氏らと3月には屋久島,10月には大台ケ原を訪れ,シカと植生の関係について考えさせられました.大台ケ原のシンポでは対話のきっかけがつかめるかと期待しています.また,ヒグマ管理計画作りの準備も進めています.石垣に2度訪れ,オニヒトデ対策の秘策を教えていただきました.
8月に3冊目の単著『ゼロからわかる生態学』を発行しました.今までに約2000部が売れ,『環境生態学序説』も第5刷になります.4月にはNHK-BS討論番組に出演しました(ビデオ).
今年は本業の原著論文では仲間に助けられてばかりでした.もう少し時間にゆとりを作って,来年,再来年には新たな生態系リスク管理学のうねりを作りたいと思います.今年もどうぞ宜しくお願いします.
2005年元旦 松田裕之
[A63x] Makino M & Matsuda H (in press) Co-Management in Japanese Coastal
Fishery: It’s Institutional Features and
Transaction Cost. Marine Policy in press
[A62x] Abrams PA, Matsuda H (2004) The effect of adaptive change in
the prey on the dynamics of an exploited
predator population. Can J Fish Aq Sci in press:
[A61x] Kaji K, Okada H, Yamanaka M, Matsuda H, Yabe T (2004) Irruption of a colonizing
sika deer population. J. Wildl Managem in press
[A60] Morita K, Tsuboi J, Matsuda H (2004) The impact of exotic brown and rainbow
trout on native white-spotted charr in a
Japanese stream: insight from covariations
in population densities among and within
pool/riffle units. J Appl Ecol 41:962-972
[A59] Abrams PA, Matsuda H (2004) Consequences of behavioral dynamics
for the population dynamics of predator-prey
systems with switching. Pop Ecol 46: 13-25
[A58] Nakajima M, Matsuda H, Hori M (2004) Persistence
and fluctuation of lateral dimorphism of
fishes. Am Nat 163:692-698
[A57] Matsuda H, Abrams PA (2004) Effects of predator-prey
interactions and adaptive change on sustainable
yield. Can J Fish Aq Sci 61:175-184
[A56] Abrams PA, Matsuda H (2004) Population dynamical consequences
of reduced predator switching at low total
prey densities. Pop Ecol 45: 175-185.
[B18] Nakajima M, Matsuda H, Hori M (2004) Role of omnivory for fluctuation of lateral
dimorphism in fishes. Biology International, in press
[B17] Matsuda H, Katsukawa T, Kimura N (2004)
Robustness of a feedback control rule with
switching fisheries in process and measurement
errors. Biology International in press:
[B16] Matsuda H (2004) The importance of the
type II error and falsifiability. International Journal of Occupational Medicine
and Environmental Health 17:137-145
[C7] 勝川木綿・宮本健一・松田裕之・中西準子 (2004) 魚類個体群の生態リスクの簡易評価手法. 保全生態学研究. 9: 83-92
[D126] 松田裕之 (2004) 「日本生態学会の目指すところ」に参加して.
保全生態学研究. 9:201-202.
[D125] 松田裕之 (2004) ゲーム理論と生命・環境倫理.
メディカルカルチャーフォーラム 印刷中
[D124] 松田裕之 (2004) ゲーム理論とフェアプレー.
メディカルカルチャーフォーラム 印刷中
[D123] 松田裕之 (2004) 哺乳類保護管理における個体数推定の精度とフィードバック管理の留意点について.
哺乳類科学. 44: 77-80
[D122] 松田裕之 (2004) 生物多様性の価値をリスクで測る.
日本生態学会関東地区会報 52:19-23
[E19] 松田裕之(2004) ゼロからわかる生態学,環境,進化,持続可能性の科学.
共立出版. .
[E18] 松田裕之(2004) 持続的な漁業は海獣なくして成り立つのか.
小林万里・磯野岳臣・服部薫編(2004)北海道の海生哺乳類管理−シンポジウム「人と獣の生きる海」報告書北の海の動物センター.
88-96.
[H8]松田裕之・矢原徹一・石井信夫・金子与止男編(2004)ワシントン条約附属書掲載基準と水産資源の持続可能な利用. 自然資源保全協会