市民セミナー

「シカと山と人の新しい関係:狩猟管理から生態系管理へ」

poster pdf jpg 講演要旨ができました

主催 横浜国立大学21世紀COE「生物・生態環境リスクマネジメント拠点」
共催 神奈川県生命の星・地球博物館、(財)国際生態学センター、日本生態学会関東地区会
後援 日本生態学会、日本土壌動物学会、(財)WWFジャパン、横浜国立大学共同研究推進センター

2005年10月1日(土)
場所:箱根 神奈川県生命の星・地球博物館 大ホール
参加費 無料(参加ご希望のかたは事前に下記連絡先までお知らせください)

プログラム
13:00: 青木淳一(生命の星博物館)開会の挨拶
13:05: 伊藤雅道(横浜国大)趣旨説明
13:10: 矢原徹一(九大理)ヤクシカ増加下での屋久島の希少植物のモニタリングと保全計画
世界遺産屋久島では、最近ヤクシカの摂食によって林床植生が急速に失われ、多くの希少植物の絶滅が危惧される事態が生じている。屋久島の森林の林床植生と希少植物を保全するためには、林道沿いにおけるヤクシカの個体数管理を行うことが重要であると考えられる。
13:50: 村上雄秀((財)国際生態学センター)丹沢山地におけるシカ食害による偏向遷移について
丹沢山地でのシカの植生への影響は宮脇・大場・村瀬(1964)から指摘されている。その後、シカ食害が拡大し、主稜線部の森林衰退(俗に言う「ブナ枯れ」)とともに丹沢山地の植生に広域に及んだことが報告された。現在この傾向はさらに進行している。
14:30: 田村淳(自然環境保全センター)丹沢山地でのシカによる植生への影響と植生回復対策
丹沢山地では1960 年代後半からシカによる人工林の被害問題に引き続き、1980 年代後半から冷温帯の自然植生への影響が顕在化している。こうしたシカの影響に対して、神奈川県は他県と異なり個体数調整に先んじて植生保護柵や樹皮食い防護ネットを設置することで自然植生の保全・再生を図ってきた。
15:10: 休憩
15:20: 梶光一(北海道環科研)知床のエゾシカ保護管理計画の論点:遷移に委ねるか、管理するか
知床半島のエゾシカは一時絶滅状態になったが1980年代半ばから急増している。そのため, 自然に放置した場合には, 植生への影響は軽減されないだろう。知床や周辺地域での生息地復元や強度な個体数管理などを実施する場合は, 生態系管理として位置づけ, シカと植生の双方について長期のモニタリングを伴う順応的な手法を採用していく必要がある。
16:00: 常田邦彦(自然環境研究センター)全国のシカ食害の実態
シカの全国的な分布についてみると,1978 年に比べて2003 年は1.7 倍に拡大した.日本には28 の国立公園,55 の国定公園,5 ヶ所の原生自然環境保全地域があり,国立・国定公園の約3 分の2 と4 ヶ所の原生自然環境保全地域がシカの分布域と重なっている.そしてシカが生息するこれらの地域の約3 分の2 から,シカによる植生等への影響が報告されている.
16:20: 羽山伸一(日本獣医畜産大)丹沢山地における自然再生事業構想とシカ保護管理計画
17:00: 休憩
17:10: 総合討論(司会:松田裕之)
18:00: 閉会

趣旨 シカの大発生は全国的な問題となっている。おもに農林業被害が中心だったが、近年、食害による植生破壊、絶滅リスクの増大も深刻な問題と認識されるにいたった。その一因に、拡大造林後の林業と狩猟の衰退が挙げられる。さらに、山間地においてはシカの食害がもたらす植生破壊による土壌浸食も深刻になりつつある。丹沢はその典型であり、神奈川県により、全国に先駆けて植生破壊、土壌浸食の調査が進み、植生回復を主眼にすえたニホンジカ管理計画が実施されている。本セミナーでは、このような「山」への影響としてシカ問題をとらえ、人の関わり方を研究者と市民がともに考えていく機会とする。

大会準備委員会
伊藤雅通 横浜国大
松田裕之 横浜国大
広谷浩子 神奈川県生命の星博物館学芸員
小池文人 生態学会関東地区会
村上雄秀 (財)国際生態学センター

連絡先 横浜国立大学大学院環境情報研究院COE事務室 FAX : 045-339-4493
E-mail : eco-coe4@ynu.ac.jp