自然再生事業指針 第一次案に対する意見と回答 

2005年5月13日

ご意見ありがとうございました。いただいたご意見は、改訂版、用語集、事例研究などを作る際に参考にさせていただきます。また、更なるご意見もお寄せください。(文責 松田裕之)

意見(ページ数、指針番号などは一次案のもの) 回答案
自然再生事業指針(一次案)へのコメント(抜粋)
全体に対する指摘
再生事業の規模別に考慮する。大きな事業は厳密に、小さなものはやや簡易にという原則(重要性の原則)は必要。 実現可能な範囲で行うという指針を設けました。
自然再生法に基づくものだけではなく、国交省の自然再生事業も含むのか? 自然再生法に基づくものを念頭に作りましたが、他の事業にも適用可能と記しています。
いつもこれをやるのはたいへん。たとえば「求められる【ことがある】」としたほうがよいのではないか? 100点満点の事業ばかりではないでしょうが、減点の対象と考えてください。やらなくてもよいと書くのは好ましくないと判断しました。
哲学がない 2-5節に明記したとおり、どのような自然を復元すべきかについては社会的合意によるものであり、本指針で特定すべきものではないという観点から、本指針をまとめました。
よくできた指針だが、書かれていなくて気になったことは、自然再生事業を行うサイトをどう選ぶか、という点。現在のような萌芽期にはやれるところから、というのでもよいが、これから充実させていくためには、場の選定に関する原則が必要だろう。オランダにおける国土生態系の計画のように、日本の国土のグランドデザインとして、自然再生事業地がパッチワークのようにデザインされていかれればよいだろう。今回のバージョンに盛り込むのは難しくても、二次案の方向性として、ぜひ視野に入れてほしい。 今後改訂版にて検討します
この指針を現場に適用するとなると、よりわかりやすいツールが必要である。他の事業に関してはコメントしない、ということが話題になったが、現実には、社会的に影響力のあるおかしな事業もたくさんあるので、悪い例を挙げるのではなく、生態学会からよい例をアピールしていくようなやり方で、他の事業にも影響力を持っていければよいだろう。 今後改訂版ならびに「自然再生ハンドブック(仮称)」をまとめる際に検討します
主体は誰か、という問題や、これを全部守るのは大変、という問題とからんで、これから、個別の事業に深くコミットする研究者、地元と全体の方針をつなぐ役の人が重要になってくるだろう。 今後改訂版にて検討します
よくできた指針だが、書かれていなくて気になったことは、自然再生事業を行うサイトをどう選ぶか、という点。現在のような萌芽期にはやれるところから、というのでもよいが、これから充実させていくためには、場の選定に関する原則が必要だろう。オランダにおける国土生態系の計画のように、日本の国土のグランドデザインとして、自然再生事業地がパッチワークのようにデザインされていかれればよいだろう。今回のバージョンに盛り込むのは難しくても、二次案の方向性として、ぜひ視野に入れてほしい。 今後改訂版にて検討します
この指針を現場に適用するとなると、よりわかりやすいツールが必要である。他の事業に関してはコメントしない、ということが話題になったが、現実には、社会的に影響力のあるおかしな事業もたくさんあるので、悪い例を挙げるのではなく、生態学会からよい例をアピールしていくようなやり方で、他の事業にも影響力を持っていければよいだろう。 今後改訂版にて検討します
主体は誰か、という問題や、これを全部守るのは大変、という問題とからんで、これから、個別の事業に深くコミットする研究者、地元と全体の方針をつなぐ役の人が重要になってくるだろう。 今後改訂版にて検討します
個別箇所に対するコメント
2-4.自然は「再生」できるか?(p.6)
タイトル(自然は「再生」できるか?) が内容にうまく反映されていないように考えられます。「自然再生事業における基本姿勢」などのタイトルが適当ではないでしょうか? 「自然再生事業に対する基本認識」に改めました。
人間が自然から受ける恩恵は「自然資源などの直接的な恩恵」と「健全な生物多様性が存在することによる間接的な恩恵」が考えられます。単に「自然の恵み」と記載すると、人間にとってのメリットというものだけが重視されてしまうように見えてしまいます。具体例も取り入れて、「直接的及び間接的な自然な恵み」と記す方が良いと思います。以降の「自然の恵み」と記されたところも同様な変更が必要だと考えられます。(p。6) 「自然の恵みには、自然資源などから得られる経済的恩恵のほか、経済価値に直接換算されていないさまざまな間接的な恩恵がある。」という文言を加える(p.8)とともに、用語解説で説明します。
明治神宮の例(p.7)は、はじめから自然再生を目的にしたものではないため、例としては適切か疑問があります。 「自然再生事業としては望ましくない」と文言を加筆します。
明治神宮の森が作られたのは約90年前のはず。 年代を確認し、1920年頃に、という記述に改めました。
明治神宮の記述について→内容としては再導入に関する項目を新たにつくり、そこで述べるべきではないでしょうか? 改訂版で将来検討します。
2-5.科学的命題と価値観にもとづく判断について(p.7)
「合意形成に資する客観的な情報提供を支援することが」の方が適切(p.8)。 そのように改めます
追及する科学が保全生態学(p.8)…応用生態工学は入るのか?現場の方は応用生態工学の方を知っている。 保全生態学の用語解説で、応用生態工学も含むものと説明します。
生態学会として出すものであるなら、ここであえて「保全生態学」を定義する必要はないのではないか。単に「生態学」でもいいのではないか。 生態学自体は、原則的には価値観に踏み込まないものなので、そこに踏み込んでいる保全生態学は少し特殊である。そこを意識するという意味で、明記するほうがよいという意見もありましたので、保全生態学のままとします。
3-1.(指針1)(p.9)
種組成と生育・生息場所・・・冒頭に「特定の」を入れると、本来意味するところを反映することが出来ると思います。 冒頭の「人間」を「地域の人々」に改めました。
3-1.(指針2)群集構造と種間関係(p.9)
「有性繁殖」という言葉は適当か (有性生殖ではないか?) 有性生殖に改めます
3-1.(指針3)生態系の機能(p.9)
森林に関して、森林面積が都市部の開発にもかかわらず安定しているのは放棄農地(休耕田)への植林,北海道の草地(いわゆる原野)への造林などの要因が大きいと思います.いずれにせよ,日本の土地所有者が強い意志で放棄地や伐採跡地に木を植えてきたのは敬意に値します.その意味で山村住民は里山以外にも「自然再生」を実践してきました. 2-1節のところで「A伝統的な農業の衰退や里山・里地・森林などへの手入の縮小・撤退」と改めます。
(指針10,11の箇所で質問のあった「土壌生態系」に関して) 文言を指針3のところでも加筆します。
最後3行の記述(健全な生態系の機能は・・・)は、内容が主題と一致していないように感じられます。別の項に挿入するべき内容と考えられます。(p9) また、健全な生態系の機能は、自然の過程で発揮されるものであり、多くの人工干潟のように半永久的な土木工事によってしか維持されないような機能の回復方法は、必ずしも適切な自然再生と言えない。」と改めます。
3-1.(指針5)人と自然との持続的なかかわり(p.10)
「風土」と「自然再生事業」の定義について、生態学から少し離れますが、フランスの地理学者で哲学者でもあるオギュスタン・ベルグが「風土の日本」という著書の中で「風土」を、「地理的、歴史的に定義された、文化=自然の複合体のこと」と定義しています。仮にこの定義を採用できるのであれば、自然再生事業は、「人間の活動によって断絶又は急激に変化させられた「風土」を修復するための事業」と定義することができるのではないかと思います。(分かりにくくなるので「維持」は抜きましたが、この中に入れることはできると思います。)この定義を使う利点は・どういった場合に、いつを目標に自然再生するのかを一般化して記述できる(8、9など)・伝統的技術や環境教育などの人文社会のことも自然再生の目的として整理できる(5,15,22,24)があるかと思います。 ご指摘の点を踏まえ、「固有性と歴史性をもち、地域ごとに異なる自然と人間の関係、すなわち、風土が作られてきた」との文言に改めます。また、指針8に風土を加筆するとともに、指針11を「固有性保全の原則」に改めるなど、より的確な風土の用法に改めました。
「かつての持続的に保たれてきた人と自然の関係から学ぶべきところも多いだろう」→懐古主義的な印象を受けます。いわゆる伝統的知識については、その有効性を検討したうえで慎重に扱うべきものだと思います。社会、価値観、文化は常に変化するものであり、かつて有効な知識でも、現代社会に通用するとは必ずしもいえないと考えられます。 ご指摘の点は指針9に明記しています。「その方途を探る上では、指針9に示すように、かつて持続的に保たれてきた人と自然の関係から学ぶべきこともあるだろう。」と改めます。
「モデル」という語の意味が分かりにくいように思えます。→「将来のビジョン」の方が適当ではないでしょうか? モデルというのは具体的なものですが、ビジョンはより抽象的だと思います。
3-2.(指針6)生物相と生態系の現状を科学的に把握し・・・(p.12)
「基本認識の明確化」は「多様な主体間における基本認識の明確化」の方が良いのではないでしょうか。 基本認識は各専門家がもっていて相違しているというよりは、誰も明確に認識していない場合がよくあります。原案のとおりのほうが正確と思います。
キーストン種はどれか良く分からない。事業者がどう認識するかが重要で、記述が指針に必要だろう。
群集構造を規定する種=キーストン種ではないので、その意味で使うのならこの言葉は不適切。
「キーストン種など生態系への波及効果の大きな種」と表現を改めます。
ランドスケープの特性の説明(p.11)に、「地質」を加える。 「植生・地質・地形」に改めました。
生物相のところに「(絶滅危惧種の有無など)」と書いてしまうとそれだけに限定されてしまわないか。 「生物相(絶滅危惧種の有無など)」→「絶滅危惧種の有無、生物相」と改めます
指針6の内容が逆に自然再生事業のブレーキになってしまうことはないか。 必要性の検討、という項目なので、行うべきでない場合があることの明記は必要という会場での意見もあり、このままとします。
「今なお良好な自然が残されている場所で実施されている場合もある」としているので、この指針はそのような場所だけに限定したものと誤解される より一般的な指針であることがわかるように、文章を「自然再生事業を実施するに当たっては、生物相と生態系の現状を科学的に把握し、自然再生事業計画がそれらに及ぼす影響を的確に予測・評価する必要がある。特に、何らかの理由で自然環境の悪化が見られるものの、今なお良好な自然が残されている場所で実施される場合には、注意が必要である。」と改めました。
3−2の6と7は 内容がほぼ一致しているため、1つの項目にまとめるべきではないでしょうか? 過去と現在の基本認識の明確化と、将来予想は両方必要ですので、分けて記述しました。
11p 冒頭の文は「悪化が見られる」と「良好な自然が残る」と言う点が一見矛盾しているように見え、混乱する可能性があります。そこで、冒頭は「今なお良好な自然も残されている場所で事業を実施するにあたっては、生物相と生態系の現状を科学的に把握し・・・」としておくと分かりやすいと思います。 フォーラム会場でのほかの方の意見を踏まえて、文章を再構成しました。
1行目「回復」→自然は常に変化するダイナミックなシステムであるため、ある定められた目標に自然を戻しても、それを「回復」と捉えてしまうことには無理があるのではないでしょうか?内容をより簡明化させるために4行目の「特別な対策をとらず・・・」以降の記述のみで十分と考えられます。 放置してもよい場合の根拠を強調する必要があります。最初の文を、「生態系は常に変化する動的なシステムであるため、放置しても自律的にその機能や構造などが回復することがある。」と改めます。
6行目「限って」→限定的になってしまうため、削除するべきだと思います。 限定的にするために書いた文章です。現状では、放置してもよいところで「第二の開発」を行われる危惧のほうが重要と考えます。
8 時間的・空間的広がりを考慮して、再生すべき生態系の姿を明らかにする
内容はよいが、タイトルがあっていない。タイトルに「地域固有の文化風土を考慮して」という内容をいれてはどうか。 見出しを「時間的・空間的広がり、風土を考慮して」に改めます。
3-2.(指針9)自然の遷移をどの程度とめるべきかを検討する(p.12)
針葉樹人工林の管理について加筆したほうが良い。人工林については、間伐・下草刈り・つる切りなどの管理を行なう必要がある。適切な管理を行なえば、林床植物の多様性が維持され、結果として、昆虫などの多様性も維持されるだろう。また、表土の安定などにも役立つだろう。しかし、林業人口の減少によって、このような管理が行なわれていない人工林が増えている。このような人工林については、適切な管理を行なうか、伐採後に遷移を進め、原生的状態へと誘導する必要がある。自然再生事業に限定されない問題だが、自然再生事業地内に人工林がある場合も少なくないので、人工林への指針を追加したほうが良い。 人工林そのものについては、自然再生事業の対象ではないので、本指針でも多くは取り上げませんが、指針9の部分で文言を考慮します。 その具体的文言としては、最後に以下の段落を追加しました。
「人工林については、間伐などの手入・管理を行なう必要がある。・・・」
生態系の維持機構として,遷移に言及しながら、撹乱に言及していません。「どんな種類の撹乱がどのような頻度、どのような空間パターンで発生するかを、撹乱体制(disturbance regime)と言います。生態系のありようは、撹乱体制に強く依存します。同じ地域にある天然林と里山二次林の違いも撹乱体制の違いで説明することが可能です。「遷移をとめる」という表現はわかりやすくて私は違和感を感じませんでしたが、撹乱の概念を入れるのなら、「里山二次林が維持されるのに必要な撹乱体制を考え、必要なら人為的にコントロールする。具体的な方法としては定期的な伐採、下草刈り等が考えられる。」みたいな感じでどうですか。以前と同じ手法でなくても、似たような撹乱体制が実現されれば良いところがミソ」2)「治山・治水などの環境保全機能や炭素の貯蔵量が増大する」と言う部分も、一般性に関して疑問が複数聞かれました。これは原生林のほうが二次林より優れていると言う意味ですね? 1)以下の指針の文面を「このような二次的自然の再生にあたっては、人為によって遷移を止め、昔ながらの生態系の状態を維持するために、必要な人為的な撹乱(利用)を導入することが求められる。」と加筆することが考えられます。ただ、このような二次林で生息している貴重種などの生息環境は一様ではなく、具体的な「伐採とか下草刈り」が一般的に適切であるかどうかは一概に言えないので、具体的な撹乱行為を記載することは避けた方が良いと判断する。2)治水、治山という視点からすれば、その地域での自然の成熟林(原生林)がその土壌構造、根系の発達レベルからみて、その伐採後再生する自然林、または人工林より優ることは一般的に言えます。炭素量についてもしかりです。
二次林は原始林より二酸化炭素吸収量は必ず下がるか? 二酸化炭素吸収量は総量でみれば、その炭素蓄積量として評価できます。一般的に原生林、自然林を伐採して再生する二次林は土壌と植物体に貯留する炭素量は回復していないのが一般的です。また、ある期間、年間レベルの炭素収支で見た場合、若い生長著しい二次林は林地での炭素吸収量は一見、生長の止まった原始林より大きいことは事実でしょう。しかし、伐採した際の材の分解、土壌炭素の分解などを考慮すれば、その二酸化炭素の総収支において、原始林には及ばないことは明らかです。もちろん、二次林が維持されて、生産性の高い樹種構成に転換した場合はその地域の原始林より総炭素収支が改善されることはないとはいえません。しかし、それはきわめて稀な場合といえます。
3-3.(指針10)地域の生物を保全する(風土性の原則)(p.12)
地域的な絶滅種の再導入について、再導入がふさわしいか否かを含め、何らかの指針を示すべきである。不連続分布を示す生物では地域系統群全体が絶滅している場合もあると考えられるが、その場合在来の系統と大きく離れた集団を導入すべきなのか?保全すべき対象が、遺伝的に固有な地域集団(系統)であることを立証できない場合は、保全すべき集団として見なされないのか? ごく近年に地理的隔離等で生じた集団を、地理学的情報や分散能力によってのみで系統と見なしてよいのかどうかを示して欲しい。 本指針は地域固有の系統を保全するためのものであり、絶滅した種の再導入については、改訂版において別の項目を新設して言及することを検討します。ただし、盛土などの非意図的導入への注意を喚起する文言をこの項目に加筆します。
どこかに再導入に関する内容を入れたほうがよい。情熱をもって良かれと思って導入を進める人がかなりいる。その警鐘としても、再導入の問題点は書いたほうがよい。 「自然再生事業で種の再導入を行う際には」と加筆します。
系統の認識は難しい場合があるのではないか。 現代の認識では、系統は形質やDNAがほとんど違わなくても歴史性などを考慮して認識されるものなので、この表現でも問題ないのではないか。
最後の2行が大事。「マーカーを用いた分析や、生物の移動範囲・・」→「マーカーを用いた分析や、その生物の空間的分布様式、生物の移動範囲・・ 修正しました。
3-3.(指針10, 11)(p.12-13)
5行目の文末に再導入を配慮した記述が必要であると思われます。具体的には「但し、過剰な人為的な影響の結果、地位固有の系統が消失し、生態系の機能の復元が必要とされるならば、十分な科学的に判断に基づき、他地域の系統の再導入も検討する必要がある。」といった記述が必要であると考えられます。 このような場合の再導入の指針については、まだ議論が不十分であり、改訂版で検討させていただきます。
土壌に関して。生物の扱いに提言が多くあるのに,環境の整備について十分な提言がないことが気になります.陸域の回復,復元の原則のひとつに土壌の保全を加えるべきと考えます. 指針3「生態系の機能」において「陸域生態系においては、土壌・地下水の復元が重要である。」との一文を加え、指針11(多様性保全の原則)に「陸域においては土壌生態系も含めた」と加筆します
冒頭の文と最後の一文は内容に矛盾が生じていると思われます。「保全の重要度を評価」した結果が「絶滅危惧種」や「指標種」なのではないでしょうか?冒頭の文は削除することが適当と考えられます。また、最後の一文の文末、「評価する必要がある」の部分は「評価した上で地域の生態学的特性の維持・再生に必要な種の選定は慎重に行わなければならない」とすると良いと思います。 この指針は絶滅危惧種だけでなく、すべての種を保全すべきという趣旨です。最後の文を「このためには、種の絶滅リスクに応じて、保全上の重要度を評価し、保全上有効な方策を考慮する必要がある。」と改めます。
3-3.(指針11)地域の生物多様性(構成要素)を再生する(p.13)
地域の固有の遺伝子でないと、だめか?在来種でもその土地固有でないとだめ? よくわかるよう指針を書き直しました。
表題を「再生」から「保全」にすべき。 改めます。
3-3.(指針11-12)
タイトル「多様性の原則」→「多様性保全の原則」 そのように改めます
タイトル「変異性維持の原則」→「変異性保全の原則」 そのように改めます
3-3.(指針12)
内容は10と重複しているように思えます。10の中にまとめて記述すべきではないでしょうか? 地域固有性の維持と、地域個体群内の変異性を維持することは別のことであり、両方必要と考えます。
3-3.(指針13)
自然再生事業はあくまで人為によるものです。タイトル内の「人為を必要最小限にとどめる」は事業そのものに誤った印象を与える可能性があるため、タイトルを「自然の回復力を最大限に活かす」が良いのではないでしょうか? 他のご意見に基づき、「自然の回復力を活かし、人為を必要最小限にとどめる(回復力活用の原則)」と改めました。人為が必要最小限で行われていることを示すべきだと考えます。
3-3.(指針14)事業に関わる他分野の研究者・・・(p.13)
「基礎・応用分野の自然科学者」という表現では、工学系の人は自分が含まれていないと感じるのではないか。 「基礎・応用分野の自然科学者」→「基礎・応用分野の自然科学者、技術者」と改めます。
3-3.(指針15)
最後の部分の「社会の安定性にも寄与する」という文言の意味が不明瞭。当該部分を「持続可能な社会の実現に寄与する」と変更してはどうか。 そのように改めます
費用対効果の議論はどこかに必要だと思うがここが適当かどうかは疑問。
自然再生事業が公共事業として行われる以上、費用対効果のことはきちんと記述しておく必要がある。別に項目を設けたほうがよい。
実現可能性を追求する新たな指針を加え、そこで言及しました。
2行目 「価値の高いものが多い」とありますが、それを裏付ける十分な根拠が必ずしも存在しているとは言えません。「価値が高い場合もある」とした方が無難に思われます。 そのように改めます
伝統的な文化が必ずしも現代社会の流れに沿うとは限らず、また将来的に持続可能となるとは限りません。そのため、5行目の文末に次の一文を挿入することを提案します。「但し、採用する伝統・文化が将来的にも有効であり、現代社会に適合する合理的なものか検討することも必要である。」 ご指摘に従い、「但し、採用する伝統・文化が、現代社会に適合し、将来的にも有効で合理的なものか検討する必要がある。」と加筆します。
6行目の「短期的な評価ではなく」は短期的評価の否定のように感じられます。実際には短期・長期の両方の評価が必要であり、また、現実的な問題として評価は多くの場合、(途中経過の)断片的・一時的な評価によるものとなります。そのため「短期的な評価だけでなく」とすべきではないでしょうか? ご指摘どおり修正しました。
3-4.順応的管理の指針(p.14)
管理をやる主体をしっかり決めておく必要がある。
事業の推進主体は協議会だが、モニタリングについては第3者機関を入れなくてはならない。
関わっている人がモニタリングをして、それを第三者が評価するという仕組みでもよいだろう。
新たな指針「事業の透明性を確保し、第3者による評価を行う」に加えます。
透明性の確保も大事だが、科学的・客観的に評価可能な仕組みを確保することが必要だろう。 同上
モニタリングと事業自体の評価は別のことなので、後者については情報公開の程度なども評価されるべきである。 同上
指針16-20をまとめる見出しとしては「不確実性に対処するための指針」の方が適切。 指針16(予防原則)に明記したとおり、予防原則を順応的管理やリスク管理の原則の一つとみなしています。予防原則と順応的管理の定義を用語集でも明記します。
3-4.(指針16)
タイトルと内容が一致していないと思われます。この内容ならば「起こりうる不可逆的な影響に対して予防原則を用いる」とするべきではないでしょうか。 「不可逆的な影響不確実性に備えて予防原則を用いる」と修正します。
3-4.(指針18)用いた仮説の誤りが判明した場合・・・(p.16)
説明責任の前に「開示および」をいれる。 そのように改めます
3−4行目 いきなり「事業計画を中止」とするのではなく、「一時的に事業を中止し、モニタリングを継続した上で判断することが適当である」とすべきではないでしょうか? 「放置しても自然が回復する可能性が高いと懸念および判明した場合には、それぞれ、事業を一時的に中断した上で再検討することおよび事業計画のを中止することが適当である。」と修正します。
文末は「説明責任」に関して、「その所在を明らかにする必要がある」ということも加えるべきではないでしょうか? 「誤りを明らかにすることは、順応的管理において欠かすことのできない情報の開示および、説明責任である。そのような場合には、説明責任の所在を明らかにする必要がある。」と訂正します。
3-4.(指針19)
「べきである」と言う表現が多数あるが、評価基準が明確でないため、判断は現実的に困難であることも考えられます。そのため「望ましい」と改めるべきだと思います。
「具体的に検証されるのはほとんどの場合、目的ではなく、目標である。」の一文は当然のことであり、記述の必要はないと思います。
目的、目標を設定することは必須事項であり、「望ましい」では表現が弱いと思います。また、目的が検証されていないことは必ずしも自明ではありませんし、常にそうだとも限りません。
3-5.(指針21)科学者が適切な役割を果たす(p.17)
科学者の客観的なデーターを評価、保障するシステムの必要性の文言をいれる。 新たな指針「事業の透明性を確保し、第3者による評価を行う」に加えます。
透明性の確保も大事だが、科学的・客観的に評価可能な仕組みを確保することが必要だろう。 同上
モニタリングと事業自体の評価は別のことなので、後者については情報公開の程度なども評価されるべきである。 同上
科学者のみならず、他の主体の役割も明確にすべきではないでしょうか?特に事業において行政が占める役割は非常に大きく、重要です。行政の役割について項を設け、明記すべきであると思います。 貴重なご意見ありがとうございます。改訂版にて検討させていただきます。
3-5.(指針22)自然環境教育の実践を含む計画をつくる(p.18)
自然環境教育の部分では「登山、自然探検」などが記載されているがオーバーユースの問題がありこの点を入れることが必要と思います。体験型自然教育が実際では体育会系の体験優先の考えで、生態、環境などと矛盾するケースがあまりにも多いので現場では困っています。「自然経験」というより「生態教育」「自然観察体験」などの言葉が適切ではないでしょうか。 「環境教育に関する指針のタイトルを「自然再生事業を担う次世代を育てる実践を含む計画をつくる」に変更し、加筆します。
ここで述べられていることは、一般的にいう自然環境教育よりも広い内容を含む。地域の中で、次世代をどう育てるかということに主眼を置いた表記にするのがよい。 同上
登山のみならず、農業体験など、生業に関わる体験のことも盛り込んだほうがよい。 同上
本章内での環境教育に関する記述は内容に即していないように思えます。3−3に「自然環境教育(教育・普及・啓発の原則)」として項を設けるべきではないでしょうか? 別のご意見も踏まえ、指針の見出しを変更しました。環境教育は、広義にはこの指針の中に含まれると考えています。
3-5.(指針23)地域の多様な主体の間で合意をはかる(p.18)
合意形成は全員一致が原則なのか?そうではないと思うが、何も記述がない。 合意形成の方法は多様であり、信頼関係を保ち、二項対立を避けて建設的な議論を行うことが重要との立場から、
実施主体が市町村にある場合、意思決定者が行政界とは一致しない場合が多い。そのあたりの広がりの必要性を言及したほうがよいのではないか。 具体的な文案を寄せてください。
「二項対立をさける」という内容を書き込んだほうがよい。 タイトル「主体の間で合意をはかる」→「主体の間で相互に信頼関係を築き、合意をはかる」に改めます。
3-5.(指針24)より広範な環境を守る取り組みとの連携をはかる(p.19)
(地球温暖化対策事業)温暖化森作りにも単なるニ酸化炭素量ではなく生態的な価値を考慮して森林の滋養を図る必要性があります。単なる「緑化ではなく緑の生態的な質」にも注意を図ることが必要との文言を是非お入れください。 的確なご指摘ありがとうございます。ただし、これらの項目だけを羅列するのは好ましくないとの意見もあり、例示にとどめることにします。
(ビオトープ造成)にしても地域生態系の意味を考慮して、保全優先の原則を持って取り組んでいくよう文言を入れていただければと思います。 同上
(企業活動)ビジネスと生物多様性が近年急速に接近しており、現在土木、農業、開発、生活面でマーケット(市場)も生物多様性を理解する必要が生じています。これらの基づき生物多様性を無視することは大きなリスクとなり、一方これを守り、保護的な関与をすることは企業活動にとっても大きなチャンスになります。地域の企業においても、自然に関与する企業はその利害関係者(ステークホルダー)を広く認め多くの関係のなかで再生事業に取り組んでもらいたい、ということをお入れいただきたく思います。 同上
この項の目的を考えると、ここの取り組みに対して、あーしろこーしろというのは違和感がある。最初の6行だけにしたほうがよい。 他のご意見もあり、例示にとどめることにしました。
ここで具体的にあげた事例が自然再生事業と称して行われることも多いので、あえて言及しておいたほうがよい。 同上
書かれている内容はよいが、この指針ではなく、各論に入れるべきではないか。 同上
ここの例示は、レベルの違うことが並べられているので、思いつきで書いた感があり、それが違和感をうむ。視点やレベルを合わせた表現に直すべき。たとえば、(くらしの見直し)の部分は、農水省の事業に言及するなど。 他のご意見もあり、例示にとどめることにしました。暮らしの見直しという表現は削除されました。