以下の資料の画像情報は、環境省関連サイト 平成17年度第2回平成18年2月23日)科学委員会配布資料の資料4にある。


知床世界自然遺産地域科学委員会
委員長 石城謙吉 

今後の知床世界自然遺産登録地に関わる科学委員会と
地域連絡会議の関係、及び、科学委員会の位置付けについて(概要)


2006年1月20日

知床世界自然遺産地域科学委員会・合同事務局 殿
知床世界自然遺産地域連絡会議 殿

知床世界自然遺産地域科学委員会
委員長 石城謙吉 

今後の知床世界自然遺産登録地に関わる科学委員会と
地域連絡会議の関係、及び、科学委員会の位置付けについて

平成17年8月26日に行われた平成17年度第一回科学委員会において論議があり、その後の検討課題となりました。科学委員会と他関連協議会等との関係および地域連絡会議のあり方について、昨年秋以来委員間でメーリングリスト上を含むさまざまな形での意見交換が行われ、その結果、このことに関する意見書をまとめて科学委員会合同事務局ならびに地域連絡会議に提出する事が合意されました。この度、その意見書がまとまりましたので提出いたします。科学委員会と他関連協議会との関係ならびに地域連絡会議のあり方に関する今後の検討の上に、この意見書の趣旨が活かされることを要望します。

1) 地域連絡会議の構成員について
 地域連絡会議に、地元関係団体等も正式に含めるべきである。
(理由)
 自然再生推進法第8条(資料1)には「第八条 実施者は、次項に規定する事務を行うため、当該実施者のほか、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等その他の当該実施者が実施しようとする自然再生事業又はこれに関連する自然再生に関する活動に参加しようとする者並びに関係地方公共団体及び関係行政機関からなる自然再生協議会(以下「協議会」という。)を組織するものとする」という形で協議会を位置ずけている。自然再生基本方針(資料2)において、「自然再生事業を円滑に推進する観点から、土地の所有者等の関係者についても自然再生の趣旨を理解し自然再生に参加する者として協議会への参加を得ることが重要」とされている。世界遺産候補地管理計画(資料 3)ではこの協議会に該当する組織は地域連絡会議をおいて他にはない。ただし、管理計画では「候補地は、上記の各種制度を所管する環境省、林野庁、文化庁及び北海道が、地元斜里町及び羅臼町、その他の関係行政機関、関係団体との密接な連携・協力のもとに一体となった管理を行うこととし、今後管理体制の一層の充実に努めていく。また、地元の関係団体等は、候補地の適正な保全・管理が円滑に図られるよう協力する」という形で、行政諸機関のみが構成員であり、地元関係団体等は「協力する」立場に留まっている。これは前近代的な形態であり、上記の自然再生推進法と比べても対照的である。合同事務局には、自然再生事業と世界遺産の管理の目的や趣旨の差から、この体制の相違を説明できる根拠を示す説明責任がある。
 間接民主主義における行政機関は、議会による決定の範囲内で一定の裁量権が認められている。しかし、その裁量権は常に情報公開と市民参加によってチェックされて始めて正当性(legitimacy)が保たれるものである。したがって、管理を主体的に担う関係者の意思を自動的に行政が代弁しているのだという解釈は成り立たない(井上真 私信、井上2004)。
 特に、世界遺産海域管理計画では漁業者団体の自主管理がその中軸となっている。これは、実質的な事業主体となっていると理解される。それにもかかわらず、地域連絡会議の正式構成員になっていないことは不合理である。

2) 科学委員会と地域連絡会議との関係について
 科学委員会は、地域連絡会議の正式構成員にはならず、助言する立場として関るべきである。
(理由)
上記の自然再生推進法(資料1)においては、個別の事業に対して専門家の科学委員会を設ける規定はないが、上記第8条のように専門家を正式構成員とすることが明記されている。したがって、自然再生事業と世界遺産における合意形成の過程における科学者の役割が同じならば、世界遺産の地域連絡会議においても科学委員会に参画する科学者の一部またはすべてが正式構成員となることができると理解される。ただし、自然再生推進法の条文自体は、科学委員会という組織代表を正式構成員とするものではない。
 科学委員会が傍聴する際には、助言者としての役割が求められていると考えられるが、正式構成員であることは、科学者もしくは科学委員会が利害関係者の一員であると理解される。科学委員会はその設置要綱第1条において「世界自然遺産に推薦された知床の自然環境を把握し、科学的なデータに基づいて陸域と海域の統合的な管理に必要な助言」を与える組織であると明記されている(資料 4)から、正式構成員というよりは傍聴し、助言し得る立場として地域連絡会議に参画することが自然であろう。
 知床は自然環境の原生的要素が多く残されているとはいえ、縄文時代以降の人間の営みが大きな影響を与えた自然であることが認められている。そのような場合には、「専門家としての科学者の使命は、まず、科学的命題と価値観が関わる判断を区別し、前者に関しては、信頼性の高い情報や実証的分析結果は何であるか、どのような調査や分析によってデータの信頼性を高めることができるかを、一つ一つ明示していくことである。異なる価値観の下に展開される計画がどのような帰結をもたらすかについて、科学的な予測を示すことによって、合意形成に寄与することが重要である」(資料 5)。この指針によれば、科学者が利害関係者の一員として、専門家としての価値判断を述べることもありえるが、それ自体が科学的命題ではないことに注意すべきである。また、科学委員会に参加する科学者が同じ価値判断を下すという保証はない。科学委員会の設置要綱第1条(資料 4)によれば、科学者は自身の価値判断を述べることを付託されたのではなく、科学的見地から問題点を整理し、合意形成に寄与することが求められていると考えられる。

3)他の国立公園・世界遺産関連の検討会などの意志決定過程において科学委員会による評価・助言を求めることを担保すべきことについて
 多様な機会を通じ、多様な関係者や専門性を有する科学者との論議の場を確保し、その議論の内容と過程を公式の合意形成の過程に伝達する事が重要である。また、科学委員会としての意思を公表する手段を確保すべきである。利用適正化検討会議に対しても科学的見地から助言を行い、いっそうの連携・協力を図るべきである。
(理由)
科学委員会がその与えられた社会的役割を果たすためには、知床の保全に関して、科学委員会に意見を求めずに合意形成が図られることがないよう、担保が必要である。
 関係諸主体の協働に基づく合意形成を行う場合、地域が管理の担い手の中心となるが、知床に関心をもつ全国全世界の人々との協働(開かれた地元主義、井上真 私信)が必要と考えられる。けれども、各主体の知床との関係性や責任の軽重は多様であり、形式的に平等の関与の機会を与えることは、却って意思決定の不公正を招く(井上真 私信、柿澤2001)。また、公式の合意形成機関だけでなく、非公式の協議の場での多様な主体の討議過程自体が管理目的の共有と協働をもたらすという討議民主主義の重要性が指摘されている(篠原2004)。したがって、単に地域連絡会議や科学委員会(及び科学委員会が組織したワーキンググループ)による議論だけでなく、多様な機会を通じ、多様な関係者や専門性を有する科学者との議論の場を確保し、その議論の内容と過程を公式の合意形成の過程に伝達することが重要である。
 2004年秋の段階では、科学委員会として独自に助言をとりまとめたにもかかわらず、結果的に政府回答に反映されず、かつ政府回答まで助言が公表されなかった。科学委員会として独自に意思を公表する場が必要である。そのために公開のウェブサイトをもつことが必要である。
 また、科学委員会設置要綱(資料 4)第6条及び知床国立公園利用適正化検討会議設置要項第6条(資料6)において、「検討会議は、知床世界自然遺産候補地地域連絡会議及び知床世界自然遺産候補地科学委員会との連携・協力を図る」とあるように、利用適正化検討会議に対しても科学的見地から助言を行い、いっそうの連携・協力を実施するための具体策の検討が必要である。

(関連文献)
井上真『コモンズの思想を求めて』岩波書店、2004年
柿澤宏昭(2001)総合化と協働の時代における環境政策と社会科学―環境社会学は組織者になれるか― 環境社会学研究 7: 40-55
篠原一(2004)『市民の政治学』(岩波新書)

資料 1 自然再生推進法(2002年12月11日公布)
http://www.env.go.jp/nature/saisei/law-saisei/hoshin.pdf
【中略】
第八条 実施者は、次項に規定する事務を行うため、当該実施者のほか、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等その他の当該実施者が実施しようとする自然再生事業又はこれに関連する自然再生に関する活動に参加しようとする者並びに関係地方公共団体及び関係行政機関からなる自然再生協議会(以下「協議会」という。)を組織するものとする。
2 協議会は、次の事務を行うものとする。
 一 自然再生全体構想を作成すること。
 二 次条第一項に規定する自然再生事業実施計画の案について協議すること。
 三 自然再生事業の実施に係る連絡調整を行うこと。
3 前項第一号の自然再生全体構想(以下「自然再生全体構想」という。)は、自然再生基本方針に即して、次の事項を定めるものとする。
 一 自然再生の対象となる区域
 二 自然再生の目標
 三 協議会に参加する者の名称又は氏名及びその役割分担
 四 その他自然再生の推進に必要な事項
4 協議会の組織及び運営に関して必要な事項は、協議会が定める。
5 協議会の構成員は、相協力して、自然再生の推進に努めなければならない。
 (自然再生事業実施計画)
第九条 実施者は、自然再生基本方針に基づき、自然再生事業の実施に関する計画(以下「自然再生事業実施計画」という。)を作成しなければならない。
2 自然再生事業実施計画には、次の事項を定めるものとする。
 一 実施者の名称又は氏名及び実施者の属する協議会の名称
 二 自然再生事業の対象となる区域及びその内容
 三 自然再生事業の対象となる区域の周辺地域の自然環境との関係並びに自然環境の保全上の意義及び効果
 四 その他自然再生事業の実施に関し必要な事項
3 実施者は、自然再生事業実施計画を作成しようとするときは、あらかじめ、その案について協議会において十分に協議するとともに、その協議の結果に基づいて作成しなければならない。
【中略】
6 主務大臣及び都道府県知事は、前項の規定により自然再生事業実施計画の写し及び自然再生全体構想の写しの送付を受けたときは、実施者に対し、当該自然再生事業実施計画に関し必要な助言をすることができる。この場合において、主務大臣は、第十七条第二項の自然再生専門家会議の意見を聴くものとする。
7 第三項から前項までの規定は、自然再生事業実施計画の変更について準用する。
【中略】
 (自然再生推進会議)
第十七条 政府は、環境省、農林水産省、国土交通省その他の関係行政機関の職員をもって構成する自然再生推進会議を設け、自然再生の総合的、効果的かつ効率的な推進を図るための連絡調整を行うものとする。
2 環境省、農林水産省及び国土交通省は、自然環境に関し専門的知識を有する者によって構成する自然再生専門家会議を設け、前項の連絡調整を行うに際しては、その意見を聴くものとする。

資料 2 自然再生基本方針 (2003年3月31日)
http://www.env.go.jp/nature/saisei/law-saisei/hoshin.pdf

2 自然再生協議会に関する基本的事項
地域における自然再生の推進に際しては、自然再生事業を実施しようとする者(以下「実施者」という)が、地域住民、NPO等、自然環境に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等その他の自然再生事業又はこれに関連する活動に参加しようとする者、関係行政機関及び関係地方公共団体により構成される自然再生協議会(以下「協議会」という)を組織し、協議会において、自然再生全体構想の作成、自然再生事業実施計画の案の協議、自然再生事業の実施に係る様々な連絡調整が適切になされることが必要です。この際、自然再生が、地域の自然的社会的状況に応じて、国土の保全その他の公益との調整に留意して実施されるよう、協議会において十分検討することが必要です。
協議会の組織化及び運営は、実施者及び協議会が責任を持って行うことになりますが、その際、次の事項に留意するものとします。
(1) 協議会の組織化
ア 実施者は、その実施しようとする自然再生事業の目的や内容等を明示して協議会を組織する旨を広く公表し、NPO等地域において自然再生事業に関する活動に参加しようとする者に対し、幅広くかつ公平な参加の機会を確保すること。
イ 自然再生は、地域の多様な主体が連携し実施されるものであり、協議会には、。できるだけ自然再生に参加する地域の多様な主体が参加するよう努めることこの場合、協議会において科学的な知見に基づいた協議等が行われることが重要であることを踏まえ、地域の自然環境に関し専門的知識を有する者の協議会への参加を確保することが特に重要であること。また、自然再生事業を円滑に推進する観点から、土地の所有者等の関係者についても自然再生の趣旨を理解し自然再生に参加する者として協議会への参加を得ることが重要であること。
ウ 関係行政機関が実施者の相談に的確に応じるなど、関係行政機関及び関係地方公共団体は、協議会の組織化に係る必要な協力を行うとともに、その構成員として協議会に参加し、自然再生を推進するための措置を講ずるよう努めること。
(2) 協議会の運営
ア 協議会の運営に際しては、自然再生事業の対象となる区域における自然再生に関する合意の形成を基本とし、協議会における総意の下、公正かつ適正な運営を図ること。
イ 協議会においては、地域の自然環境に関し専門的知識を有する者の協力を得て客観的かつ科学的なデータに基づいた協議等がなされるよう、地域の実状に応じた体制を整えることが重要であること。
ウ 協議会は、希少種の保護上又は個人情報の保護上支障のある場合等を除き、原則公開とし、協議会の運営に係る透明性を確保すること。また、協議会の運営に当たっては、必要に応じ外部からの意見聴取も行うこと。

資料 3 知床世界自然遺産候補地管理計画(2004年1月)
http://www.sizenken.biodic.go.jp/park/higashihokkaido/topics/8/

2. 目的
知床を世界自然遺産に推薦するに当たり、極めて多様かつ特異な価値を有する候補地の自然環境を将来にわたり適正に保全・管理していくことを目的として、知床世界自然遺産候補地管理計画(以下、「管理計画」という。)を策定する。
 管理計画は、候補地の保全に係る各種制度を所管する関係行政機関(環境省、林野庁、文化庁、北海道)及び地元自治体(斜里町、羅臼町)、並びにその他の関係行政機関、漁業・観光関係の団体をはじめ候補地の保全・管理や利用に密接な関わりを持つ団体(以下「関係団体」という。)等が、相互に緊密な連携・協力を図ることにより、候補地を適正かつ円滑に管理するため、各種制度の運用及び各種事業の推進等に関する基本的な方針を明らかにする。
【中略】
4.管理の枠組み
(3) 管理体制
ア.基本的な考え方
候補地は、上記の各種制度を所管する環境省、林野庁、文化庁及び北海道が、地元斜里町及び羅臼町、その他の関係行政機関、関係団体との密接な連携・協力のもとに一体となった管理を行うこととし、今後管理体制の一層の充実に努めていく。また、地元の関係団体等は、候補地の適正な保全・管理が円滑に図られるよう協力する。
関係行政機関、関係団体との効果的な連携・協力を図るため、候補地の管理に当たっては、上記関係行政機関及び関係団体間の連絡調整の場として「知床世界遺産候補地地域連絡会議」(以下「地域連絡会議」という。)を設置する。この地域連絡会議における検討に際しては、地域住民や関係団体からの意見や提案を幅広く聴いていくものとする。また、候補地の自然環境に関する調査研究・モニタリング・評価とその結果に基づく順応的な保全・管理を進めるため、専門家による委員会を設置して、科学的な立場からの助言を得ていくものとする。さらに、候補地の適正な保全・管理、調査研究・モニタリングに密接な関わりを有する(財)知床財団や(財)自然公園財団、関連する公的施設(斜里町立知床博物館、知床自然センター、知床鳥獣保護区管理センター、羅臼ビジターセンター、知床森林センターなど)及び専門家との密接な連携・協力、情報交換を行う。
【中略】
6. 計画の実施その他の事項
(1)計画の実施等
候補地の適正な保全・管理が遂行されるよう、管理計画記載の各事項を円滑に実施するため、今後、関係行政機関、関係団体それぞれの役割についてさらに検討を深めるとともに、関係行政機関、関係団体は緊密な連携・協力の下、最大限努力する。
候補地の自然環境の状況を把握し、科学的なデータを基礎として適正な対応を図っていくため、専門家による委員会を設置して科学的な立場からの助言を得るものとし、地域連絡会議との密接な連携・協力体制を確立する。
 また、管理計画では記載できなかった候補地の自然環境の管理に関する細部にわたる取扱いや個別の課題についての対応等については、地域住民や関係団体、専門家からの意見や提案を幅広く聴くとともに、地域連絡会議において合意形成を図りながら、モニタリング結果等を踏まえ検討を行い、候補地の適正な管理を推進する。こうした検討の過程や結果、基礎となるデータなどについても、情報の公開、共有化を図る。なお、候補地の管理について検討する際には、自然環境保全の観点からの要請と地域の暮らしや産業との両立が図られるように調整していくものとする。
 加えて、候補地の保全・管理や適正な利用を進めていく上で、地域の市民活動を担う団体との協働関係を築くとともに、こうした関係を軸として、地域住民の積極的な参加・協力を得ることにより、地域ぐるみの活動を展開していく。なお、管理計画は、自然環境のモニタリング結果や社会環境の変化等を踏まえ、必要に応じ見直しを行う。その際、地域住民や関係団体、専門家の意見を聴き、地域連絡会議において検討することにより、適切に見直しを行うものとする。

資料 4 知床世界自然遺産候補地科学委員会 設置要綱 2004年7月8日配布資料

(目的)
第1条 世界自然遺産に推薦された知床の自然環境を把握し、科学的なデータに基づいて陸域と海域の統合的な管理に必要な助言を得るため、学識経験者による委員会を設置する。
(検討事項)
第2条 委員会は、次に掲げる事項について、必要な検討を行う。
(1)世界自然遺産候補地の保護管理に関する事項
(2)保護管理のための調査研究・モニタリングに関する事項
(3)その他目的達成のために必要な事項
(構成)
第3 条 委員会は、次に掲げる委員、オブザーバー、及び事務局をもって構成する。
(1) 委員
事務局長から委嘱された学識経験者
(2) オブザーバー
保護管理に関係する行政機関
(3) 事務局
(運営)
第4 条 委員会は、委員長が招集し、議事進行を行う。
2 委員長は、委員の互選により選出する。
3 委員長は、必要に応じて、委員以外の学識経験者等に対し、委員会への出席を求めることができる。
4 委員会は、重要な事項について検討を深めるため、委員会のもとに部会またはワーキンググループを設置することができる。
5 委員会は、原則として公開とする。
(事務局)
第5 条 委員会の事務局は、環境省自然環境局東北海道地区自然保護事務所、林野庁北海道森林管理局及び北海道によって構成し、対外的な連絡窓口は環境省自然環境局東北海道地区自然保護事務所が務める。
2 事務局長は、環境省自然環境局東北海道地区自然保護事務所長が務める。
(その他)
第6 条 委員会は候補地の適正な管理に資するため、知床世界遺産候補地地域連絡会議及び知床国立公園利用適正化検討会議等との連携・協力を図る。
2 上記に定めのない事項で、委員会の運営に必要なものについては、別に定める。
(附則)
この要綱は、平成1 6 年7 月8 日から施行する。

資料 5 日本生態学会生態系管理専門委員会(2005)自然再生事業指針.
保全生態学研究 10: 63-75 http://wwwsoc.nii.ac.jp/esj/J_CbnJJCE/EMCreport05j.html
2−5 科学的命題と価値観にもとづく判断
 自然再生に関連する諸問題の中には、科学的(客観的)に真偽が検証できる命題と、ある価値観に基づく判断が混在していることに注意すべきである。生物多様性が急速に失われていると言う現象は客観的に証明できる命題である。一方、自然と人間の関係を持続可能な関係に維持すべきであるという判断は特定の価値観に基づいており、客観的命題ではない。このような、持続可能性を目指すという価値観を前提として、その目的を達成するための方途や理念を客観的に追究する科学が保全生態学である。
 保全生態学が前提とする価値観については、必ずしも社会全体の合意を得ているわけではない。人間がどのような形で持続可能に自然を利用していくかについては、科学的に唯一の解を決めることはできず、合意形成というプロセスを通じて初めて、社会的な解決をはかることができる。このような合意形成のプロセスにおいて、特定の価値観に基づく目的が現実的に達成できるかどうか、その目的がより上位の目的と整合性があるかどうか、その目的を達成するにはどのような行為が必要か、などの問題については、科学的に検証することが可能である。このような問題を科学的に検証し、関係者に判断材料を提供し、合意形成に資する客観的な情報提供を支援することが生態学の役割である。
【中略】
23. 科学者が適切な役割を果たす
 自然再生事業に参画する科学者は、生物多様性の保全、生態系の健全性の維持という視点から目標設定が妥当かどうか、目標が達成可能かどうかを点検する役割を担う。また、科学者は、その事業の目標が達成できないリスク、および好ましくない事態が生じるリスクはどれほどかなどを、ある仮定に基づいたモデルなどを用いて査定する役割も担う。
 自然再生事業を行うにあたっては、価値観の違いや、不確実なデータの解釈をめぐり、意見の対立が起こることが多い。専門家としての科学者の使命は、まず、科学的命題と価値観が関わる判断を区別し、前者に関しては、信頼性の高い情報や実証的分析結果は何であるか、どのような調査や分析によってデータの信頼性を高めることができるかを、一つ一つ明示していくことである。異なる価値観の下に展開される計画がどのような帰結をもたらすかについて、科学的な予測を示すことによって、合意形成に寄与することが重要である。
 科学的命題であっても、データの解釈をめぐって、科学者どうしの間で意見が分かれる場合がある。このような場合には、より確かな検証方法は何であるかについて、科学者間で合意形成につとめる必要がある。科学者同士が相互理解を進める過程を公開していくことは、利害関係者全体の無用な対立を避けるうえで効果を持つ。

資料 6 知床国立公園利用適正化検討会議 設置要項
http://www.sizenken.biodic.go.jp/park/higashihokkaido/topics/21/youkou_kaisei.pdf
第6条 検討会議は、知床世界自然遺産候補地地域連絡会議及び(仮)知床世界自然遺産候補地科学委員会との連携・協力を図る。