第14 回ワシントン条約締約国会議の海産動物の附属書改正提案に対する見解

オランダ、ハーグ2007 年6 月3 日〜 15 日
松田裕之(以下の見解は個人見解である)2007年5月28日

 全体として、以下の二点が大きな問題である。

  1. 海洋生物についてはFAOの検討結果を尊重するという覚え書きがあるのに、FAOの意見を明確な根拠なく覆すものが多すぎる。両者の議論を深め、合意の上で掲載作業を進めるべきである。
  2. EUは30カ国近くになり、おおむね一致して投票行動をしているが、域内では附属書Iに掲載されても自由に貿易されている。これはCITESの趣旨に反する。欧州連合(EU)域内の取引も国際取引として制限するか、EU全体として一票とすべきである。実際に、下記のニシネズミザメやアブラツノザメはEU内の取引が北大西洋個体群への脅威になっていることが最大の問題である。

提案15[ドイツ(欧州共同体加盟国を代表して)]ニシネズミザメLamna nasus の附属書IIへの掲載。
反対。このサメには北大西洋と南半球などに分布している複数の個体群がある。特に減少が危惧されているのは欧州連合内で取引されている北大西洋個体群であり、他の個体群は適切に管理されている。この種を付属書IIに掲載しても、適切に利用されている個体群の取引を縛ることになる。他方、自由貿易される欧州連合内では付属書掲載に関係なく取引を続けることが出来る。この附属書掲載は保全上の効果をもたらさず、正直者が馬鹿を見る措置である。

提案16[ドイツ(欧州共同体加盟国を代表して)]アブラツノザメSqualus acanthias の附属書IIへの掲載。
反対。かつてはこのサメを対象とする漁業が存在していたが、現在は混獲で獲られている。附属書IIに掲載しても投棄か密売をもたらすだけであり、CITES以外の手段による保全措置が必要である。日本近海でも戦後減ったあと、現在もなお漸減傾向が続いている。EU内の取引に歯止めをかけられないことが問題。また日本としてもこれ以上減らさない対策を検討すべきだろう。

提案17[ケニア、米国]ノコギリエイ科全種Pristidae spp. の附属書Iへの掲載。
賛成。FAOも附属書I掲載を支持している。掲載するなら、その後の規制の効果を検証する必要があるだろう。

提案18[ドイツ(欧州共同体加盟国を代表して)]ヨーロッパウナギAnguilla anguilla の附属書IIへの掲載。
賛成

提案19[米国]Banggai Cardinal?sh Pterapogon kauderni の附属書IIへの掲載。
反対。FAOは掲載基準を満たしていないと言っている。FAOの見解を尊重することになっているのに、理由もなくそれに従わない種が続出するのは好ましいことではない。

提案20[ブラジル]ブラジルのアメリカイセエビPanulirus argusP.laevicauda の附属書IIへの掲載。
反対。本種の保全は原産国ブラジルの管理努力によって実行可能である。たとえば附属書IIIに掲載すればよい。自国の管理が不備であることを理由に、輸入国側に負担をかけるだけの提案にすぎない。

提案21[米国]サンゴ属全種Corallium spp. の附属書IIへの掲載。
反対。FAOは取引が原因であることは認めているが、基準を満たしていないとしている。

(以上)