第31回個体群生態学会大会(Program) 企画シンポジウム案 English
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趣旨 琵琶湖をはじめとする日本各地で、内水面漁業や森林に影響をおよぼすカワウ。琵琶湖では、2009年から実施している大規模個体数管理により、カワウの個体数は大幅に減少してきました。その結果、竹生島などでは植生回復の兆しが見えつつあります。しかし、大量捕獲による慎重個体の増加、他地域との連携など、他種の野生鳥獣管理と共通な課題とカワウならではの課題があり、今後の予断を許しません。本集会では、過去のカワウ、漁業、森林の状況、カワウと人とのかかわりについて改めて紹介するとともに、今後のカワウ個体群管理の将来像を議論したいと思います。詳細は以下に掲載予定
プログラム(案)
10月11日(開催日時未定)
14:30: 松田裕之(横浜国大)趣旨説明
14:40: 西森克浩(滋賀県水産課)滋賀県のカワウ個体群管理モデルと捕獲目標(仮題) (要旨)
15:05: 須藤明子((株)イーグレット)シャープシューティングがカワウ被害を軽減した成功事例 (要旨)
15:30: 須川恒(龍谷大学深草学舎)滋賀県のカワウ個体群制御の結果、あらためて直面している課題 (要旨)
15:55: 総合討論
16:30: 閉会
The 31st Annual Meeting; The Society of Population Ecology
University of Shiga Prefecture
Access, Membership fee see The 31st Annual Meeting; The Society of Population Ecology
October 11(not yet fixed) see also IWMC session
14:30: Hiroyuki Matsuda(Yokohama National University)Opening remarks (ses
also IWMC talk)
14:40: Katsuhiro Nishimori(Shiga Prefecture)A population management model
for Cormorant in Shiga Prefecture
15:05: Akiko Sudo(Egretcom)Sharpshooting Can Reduce Cormorant Conflicts (see also IWMC talk
15:30: Hisahi Sugawa(Ryukoku University (Fukakusa))Current problems resulted
by populaton control of cormorant by Shiga Prefecture
15:55: Discussion
16:30: Closing remark
滋賀県のカワウ個体群管理モデルと捕獲目標
A population management model and catch quota of Cormorant in Shiga Prefectur
○西森克浩(滋賀県水産課)
滋賀県では、1990年代以降、カワウ個体数が急激に増加し、漁業被害や植生破壊などが深刻化したことから、2004年から営巣地での大規模なカワウの銃器捕獲を開始した。2004年から2007年まで、毎年、約1万5千羽を駆除したが、カワウ個体数の増加傾向に歯止めがかかったものの、繁殖前期(5月)のカワウ個体数は、約3万5千羽で推移し、減少しなかった。このことから、カワウ個体数を減少させるための新たな取り組みとして、2009年から専門家による銃器捕獲を実施することとなった。実施にあたっては、簡易な数理モデルを作成し、繁殖前期(5月)のカワウ個体数と捕獲数のデータを用いて捕獲目標を設定した。その後、数理モデルを改良しつつ、毎年、翌年の繁殖前期(5月)のカワウ個体数の予測と捕獲目標の設定を行い、カワウを捕獲してきた。その過程で、カワウを拡散させないために営巣後に捕獲すること、繁殖を防ぐために営巣後はできるだけ早く捕獲を開始することなどが、カワウ個体数の減少のために有効と考えられ、捕獲に反映してきた。その結果、カワウ個体数は大幅に減少してきており、滋賀県が目標とするカワウ個体数4千羽に近づきつつある。
シャープシューティングがカワウ被害を軽減した成功事例
Sharpshooting Can Reduce Cormorant Conflicts
○須藤明子((株)イーグレット・オフィス)
コロニーにおけるカワウの銃器捕獲は,カワウを拡散させ個体数を増加させるため,銃器捕獲によるカワウの個体数調整や被害軽減は困難と考えられてきた。しかし,専門的・職能的捕獲技術者(カラー)による少数精鋭の捕獲体制(シャープシューティング)を整備し,科学的根拠に基づく計画的捕獲は,効果的な個体数調整を可能にすることがわかった。
滋賀県の琵琶湖と河川では,カワウによる漁業被害,コロニーでの植生破壊や土壌流失などの生態系被害が深刻であり,様々な被害対策が実行されたが,カワウの個体数も被害も増加し続けた。私たちは,滋賀県水産課事業として,県内の2大コロニー(竹生島と伊崎半島)において,2009〜2015年の7回の繁殖期に,1日あたり射手2〜3人,165日間(のべ373人)で,54,585羽を捕獲した。その結果,滋賀県内のカワウ個体数は,繁殖前期(5月)において,37,066羽(2008年)から7,659羽(2015年)に低減することができた。
個体数の減少と連動して,漁業被害は軽減し,生態系被害も回復しつつある。被害の減少によって,カワウを撲滅すべきという声は小さくなった。目指すべきゴール「カワウとの共存」は,大規模捕獲によって現実味を帯びてきた。
滋賀県のカワウ個体群制御の結果、あらためて直面している課題
Current problems resulted by populaton control of cormorant by Shiga Prefecture
○須川恒(龍谷大学深草学舎)
滋賀県のカワウ管理は、当初は非順応的管理の見本のような状況であったが、2006年頃より徐々に順応的管理計画をすすめ、現在計画の3順目が終わるに際して、次のステップに向けて課題を明らかにすべき段階となっている。科学的個体数調整はいわば「科学的外科手術」のようなもので、経費もかかるが必要性を見極めて実施することになる。なんでも「外科的に対応できる」と考えるのは医療的にもおかしい。まずていねいな「問診」の段階がある。繁殖コロニーや集団ねぐら、多くの漁協がカバーするカワウの採食地となっている河川や池沼の被害実態を「情報シート」の形で正確に把握し、それぞれのサイトで妥当な「地域実施計画」を立案するベースとなる情報とする。レベルの高い「問診」だと、カワウ問題を引き起こす河川などの「環境改善」すべき課題が見えてくる。それらは多少の「小技」で有効な解決ができる場合もある。滋賀県カワウ総合対策協議会には個体数調整部会があり、個体数調整の議論を科学的に進めてきた。同様に「問診」のレベルをあげて、「環境改善」の課題を把握できる「部会」が現時点で必要とされていると考える。
このサイトの問合せ先 松田裕之(横浜国立大学)
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