食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する京都宣言及び行動計画 1995年12月、京都 |
我々95カ国は、
1995年12月4日から9日まで「食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する国際会議」の機会に京都において一同に会し、
この会議を主催するため、日本政府によってとられた発意と国連食糧農業機関(FAO)によって提供された技術的支援を評価し、
この会議の開催の発意が1993年11月に開催された第27回FAO総会において歓迎されたことを想起し、
また、1984年のFAO世界漁業会議において制定された漁業管理及び開発のための戦略を想起し、
さらに、海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)、カンクン宣言、国連環境開発会議(UNCED)におけるリオ宣言及びアジェンダ21、ストラドリング・ストックス及び高度回遊性魚種に関する国連協定、公海上の漁船による国際的な保存管理惜置の遵守を促進するための協定を含むFAOの責任ある海業のための行動規範の関連規定を想起し、
さらに、生物の多様性に関する条約の締約国会議によって、1995年11月に採択された海洋及び沿岸域の生物多様性の保存と持続的利用に関する決定を想起し、
さらに、1995年3月のFAO漁業担当閣僚会議において採択された世界漁業に関するローマコンセンサスを想起し、
増大し続ける世界の人口と現在及び将釆の世代の人々のために十分な食料を確保する必要があること、並びにすべての人々の収入、財産及び食料安全保障に対し果たしている漁業の重大な貢献、及び一部の低所得食料不足国にとっての漁業の緊要性に留意し、
将来の世代の必要性について、現在の世代が負っている責任を認識し、
また、重要な天然の再生産可能な食料資源としての水生生物資源の役割、及び人類の利用のために必要な高品質のタンパク質を供給するという漁業により担われている伝統的、かつ、基本的な役割を認識し、
8億人の人々が慢性的な栄養不良に苦しんでいることを深く懸念し、
直ちに適切な行動がとられない場合には、地球的規模で、人口増加と経済成長が継続的な過剰漁獲、過剰漁獲能力及び水圏環境の悪化と相まって、食料安全保障のために必要な貢献を持続するという漁業部門の能力を著しく制限することとなることに留意し、
有効かつ総合的な漁業の管理・保存のための政策が、食料供給、収入、財産及び経済成長に長期的、かつ、重要な利益をもたらすことを確信し、
また、経済的社会的福利(栄養的、環境的価値及び貧困の軽減を含む概念)に対する漁業の最適、かつ、長期的な貢献の達成が、食料安全保障の達成のために貢献することを確信し、
資源の持続的利用の概念を尊重する発意が、水産物の利用可能性を最適化するという目的を促進し、ひいては食料安全保障を達成するための努力を支援することに留意し、
内水面漁業及び淡水養殖業の重要性、特に食料安全保障のために淡水魚が重要となっている多くの内陸国における重要性を認識し、
淡水集水地域の総合的管理と組み合わせることにより、環境的に健全で持続的な資源増殖が、特に低所得食料不足国において、淡水魚の供給を大幅に増加させ得ることに留意し、
世界の養殖業が、その生産において順調かつ急速な成長を示しつつも、特続的開発と整合した方式でその潜在能力を十分に発揮させるためには、適切な制度的及び法的枠組みを必要としていることを承知し、
魚類及び魚類製品の責任ある漁獲後の利用が、食料安全保障のための漁業の持続的貢献のために必要であることに留意し、
魚類及び魚類製品の貿易は、特に多くの発展途上国にとって極めて重要であること及び世界貿易機関(WTO)設立条約により制定された原則、権利及び義務に従って行われるべきであることを認識し、
また、多くの発展途上国、特に低所得食料不足国及び小島しょ発展途上国が、生存漁業、伝続的小規模漁業及び商業漁業からの食料安全保障に対する持続的貢献を確保する上で大きな困難に直面していること及び能力の形成、情報交換及び技術的、財政的援助を確保するためには、国際的な協力と支援が重要であることを認識し、
国際法の下における各国の権利及び義務を害することなく、我々は以下を行うべきであることを宣言する:
2.世界の生存漁業者、伝統的小規模漁業者、商業漁業者及び他の重要な漁業者の重要な経済的社会的役割を認識し、評価するとともに、それら漁業者が経済的社会的福祉のために最適の貢献を行い得る環境を提供することを探求する;
3.FAOが2010年までには、増加する人口から生じる需要を満たすための魚類及び魚類製品の供給が不足する可能性があると見通していること及びこのことは、世界の食料安全保障に悪影響を与えることとなることを認識する;
4.以下に掲げる措置が組み合わせて実施される場合には、2010年までに予測される魚類及び魚類製品の供給不足が相当に縮小し得ること及び海面及び内水面が再生産可能な食料資源の持続的な源泉として維持されることを認識する;
5.FAOの貢任ある漁業に関する行動規範を効果的に適用し、また、海洋法に関する国際連合条約、ストラドリング・スットクス及び高度回遊性魚種に関する国連協定、公海上の漁船による国際的な保存・管理措置の遵守を促進するための協定に加盟することを検討し、これらに対応する適切な国内法あるいは規制を時宜を失することなく制定する措置をとる;
8.食料安全保障を確保するため、漁業及び養殖業活動の持続的発展のための根本的な基礎としての科学的調査を促進し強化するとともに、調査能力に乏しい国に対し、科学的、技術的協力と援助を提供する;
9.漁業分野の持続的発展のための政策、戦略並びに資源の管理及び利用は、以下を基にする。(i)生態系の維持、(ii)入手可能な最良の科学的証拠の利用、(iii)経済的・社会的福利の向上、(iv)世代間及び世代内の公平性;
10.FAOの責任ある漁業に関する行動規範及びストラドリング・ストックス及び高度回遊性魚種に関する国連協定に言及された予防的アプローチを適用する;
11.各国の管轄下にある内水面、海面の両方の水域における資源の生産性を評価し、当該水域における漁獲能力を長期的な資源の生産性に相応したレベルに調整し、さらに、過剰漁獲された資源を持続可能なレベルに回復させるために適切な措置を可及的速やかに講ずる。また、公海上に存在する資源に関しても、国際法に従って、同様の措置を取るため協力する;
12.生物的多様性及び水生環境において多様性を構成する諸要素を保存し、持続的に利用し、特に、遺伝子及び種属の消滅、遺伝形質の劣化並びに生息地の大規模な破壊を招くような取り返しのつかない変化につながる活動を禁止する;
13.複数種一括管理の有効性について研究する;
16
.以下を通じ、国内的及び国際的に、人類の消費のための魚類及び魚類製品の入手可能な供給を増大させる。(i)漁獲物の最適利用と漁獲後損耗の削減、(ii)適切な貯蔵、加工及び分配技術の開発、改善、及び共有、並びに(iii)国際的な規則の調整を含む、水生生物の食品としての安全性を確保するための効果的なシステムの開発と促進;17.以下により、適当な場合、沿岸海域及び内水面の漁業の発展を支援する。(i)適切な生体の提供を通じた資源の導入及び枯渇資源の放流の援助、(ii)漁民の組織化への援助、(iii)共同体基盤又は共同で管理する漁業の促進、(iv)各国の優先度に従って、自由なアクセス制度の下に漁獲されている水域においてアクセス又は使用権を設定すること;
18.特に以下を通じ、沿岸海域及び内水面において持続的かつ環境に健全な養殖及び栽培漁業の実施を促進する、(i)適切な組織的及び法的枠組の創設(ii)他の活動との土地及び水資源の利用に関する調整(iii)環境の保存と持続的利用及び生物多様性の保存に合致した、最良かつ最適な遺伝子資源の利用(iv)社会的、環境的の影響評価の採用;
(行動計画)
国際法の下における各国の権利及び義務を害することなく、直接に、あるいは他の国と協力して、またはFAOがその他の適当な政府間機関、地域漁業管理機関または取極と協力しつつ、一連の緊急の行動をとることに合意した。これらの緊急な行動とは、以下のとおり:
1.世界的、地域的及び国内的な魚類及び魚類製品の現在、将来における生産、供給、需要の水準、並びにそれらが食料安全保障、雇用、消費、収入、貿易、及び生産量の維持に与える影響を評価し、モニターすること。
2.小地域的及び地域的な協力を促進し、また適当と考えられる場合には、ストラドリングストックス及び高度回遊性魚種に関する小地域的及び地域的な漁業保存管理機関又は取極めを創設すること。また、必要な場合には、その任務を実行するため、既存の小地域的及び地域的な漁業保存管理機関を強化するため協力すること。
3.その能力の範囲内において、かつ、適当な場合に、地域機関又は他の政府間機関と協力して、複数種一括管理及び生態系管理の可能性を検討し、かつ、科学的な基礎を強化するために、漁業の総合的評価を実施する。
4.過剰漁獲能力の削減を可能ならしめる方策を特定し、そのような方策について情報交換するとともに、適当な場合には、速やかに過剰能力を削減する行動計画を実施すること。
5.漁業及びその関連活動の社会的、文化的及び経済的特性の研究のため、効果的、かつ、標準化された方法の活用についての情報交換を開発、促進及び助長し、特に、それらの特性の重要性及び相互作用並びに管理目標との一貫性についての検証を可能とするような指標の設定につながるように計画された方策の開発を試みること。
6
.商業漁業の対象となっている資源の複数種一括管理技術の有効性を調査するための国際的プログラムに対し、人的及び財政的資源の配分を促進すること。7.漁業操業において偶発的に捕獲され投棄される魚類、海産哺乳類、海鳥、海亀、その他の海洋生物の量を推定する努力を増大させること、その系群又は種への影響を評価すること。選択的であり、環境上安全で、かつ、経済的に効率的な漁具、漁獲技術を、可能な限り開発し、また使用することを含む措置をとることにより、浪費と投棄を最小化する行動をとること、さらに、浪費と投棄を最小化する方法及び技術について情報交換すること。
8.以下を目的として、研究機関及びその他の関連機関の間の情報交換を促進すること。(i)未開発又は低開発の種を人類の食料として持続的に利用するための機会を増加すること。(ii)既存の資源の科学的知見の改善を確保するための調査活動を促進し支援すること。
9.特に、養殖及び放流活動の発展並びに管理のための、以下に関する国際的な指針の作成を重視しつつ、環境的に健全な養殖業及び放流を刺激することを目的とした、国内及び国際的な調査計画の調整を促進すること、(i)環境及び生物多様性に対する影響、(ii)バイオテクノロジーの適用、(iii)養殖された資源の健全性
10.発展途上国、特に低所得食料不足国及び小島しょ途上国のための技術的、財政的な援助計画を提供し、調整するとともに、就中、以下を通じて食料安全保障に対する漁業の貢献を達成するため、これらの国の間の協力を奨励すること、(i)淡水域及び海水域における増殖に関する技術とノウハウを迅速に移転すること。(ii)漁獲後の消耗を最小化するために必要となる能力を向上させ、増加させること。(iii)自国の管轄下にある水域における漁獲活動の管理の改善を確保すること。また、日本政府に対し、国際連合事務総長、FAO事務局長、国際連合の持続可能な開発委員会議長、1996年のFAO世界食料サミット及びその他の関連する機関による、検討と承認のためにこの宣言及び行動計画を送付することを要請する。