ミナミマグロの絶滅の恐れと回復計画

ミナミマグロの漁獲量変化

資源尾数の減少ppt
ミナミマグロの資源尾数推定値(×1000尾、Bethlehem1997による)
 

ミナミマグロは乱獲などにより1970年代から急減し、成魚の個体数は1993年ころに70万尾まで減った(上図は豪州側1997年のBethlehemによるミナミマグロ保全委員会に提出された推定値)。1980年代末から日豪ニュージーランドによる国際管理が行われたが、1980年代に未成魚をたくさん獲っていたため、8歳以上の成魚はその後も減りつづけ、ようやく1994年ころから回復の兆しが見えてきた。このように、世代時間の長い生物では、未成魚を保護し始めてから成魚が増えるまでに時間がかかる

 同時に推定された未成魚は、早くから回復の兆しが見えている。ところが、その後も順調に回復せず、上記の推定では1995年から再び減り始めている。未成魚は成魚より数が多いので、全体としても回復していない。
 これは、1995年ころの未成魚が生まれたころ、もっとも親魚が少ない1993年ころだったためと思われる。保護されているので生存率は高いが、生まれた絶対数が少ないために、再び減り始めることがある。これは、ちょうど第2次ベビーブームと同じ効果である。第1次ベビーブームは戦後産児数が急に増えて団塊の世代を作ったが、第2次ベビーブームは母親あたりの産児数は減りつづけていた。しかし母親の絶対数が多かったために子供の数も増えたのである。上記の現象は、ちょうどその反対である。つまり、保護されていても親が少なかったために子も少ないのである。
 乱獲されていた資源は、未成魚を保護しても順調に回復するわけではなく、このように振動しながら回復する。いったん回復し始めたからといって、将来を楽観してはいけない。より長期的な視点で管理を続ける必要がある。

絶滅の恐れ
ミナミマグロの減少予測(200回の計算機実験)
ミナミマグロが過去30年の減少率と同じ勢いで減りつづけると、上図のようになる。これは齢組成模型を用いたものである。現在は管理の成果により未成魚が多く、2000年までは回復しつづけるが、もしも過去30年間の減少率が続く(管理が破綻する)と仮定すると、その後は減少に転じる。乱獲されている生物の絶滅確率は、現在の個体数と減少率に左右される。2050年までに個体数が1000尾を割る恐れは1%以下であるが、2090年までに1000尾を割る恐れはかなり高い。ミナミマグロは群れを作るので、親魚が1000尾を割った時点で絶滅の恐れが高いとみなすと、100年後の絶滅確率はかなり高く、IUCNの絶滅の恐れのVulnerableに相当する疑いがある。