北海道大学農学研究科

「特別講義=非定常の生態学と野生生物管理=」 松田裕之

質問と意見は 164-8639 東京都中野区南台1-15-1 東京大学海洋研究所 松田裕之まで tel.03-5351-6494 fax.03-5351-6492 email:matsuda@ori.u-tokyo.ac.jp

参考書:
松田裕之「『共生』とは何か」(現代書館)

講義内容:
 生態系は人為的影響がなくても絶えず変化する非定常系である。そして、我々が得ている知見や情報はあまりにも少ない。野生生物管理環境影響評価には、このような不確実性と非定常性という限界を超えた人知が求められている。21世紀の新たな人知の鍵は、環境化学物質の問題でも登場するリスク評価である。それらの考え方ダイナミクスを力学系などの数理的手法を用いながら解説し、同時に下記のような具体的問題を紹介する。

9/27 10:30- No.1 マイワシの世紀末(浮魚類の個体数変動機構)
9/27 13:00- No.2 サバの過去を読む(持続可能な漁業、非定常最適化)
9/28 10:30- No.3 エゾシカと順応管理(不確実性、危険性の周知、ヒグマ問題)
9/28 13:00- No.4 生態系管理と環境影響評価の諸問題(愛知万博問題)
9/29 10:30- No.5 絶滅の恐れとは何か(マグロの絶滅確率、植物Red Data Book)


No.1 マイワシの世紀末(浮魚類の個体数変動機構)
浮魚類の個体数変動機構 (以下、水産庁の頁)マイワシの話魚種交替
全体を通じた参考書: 松田裕之「『共生』とは何か」(現代書館)
問題:反証可能性と実証可能性の違いを述べよ/Heteroclinic cycle(May-Leonard軌道)とは何か/マイワシとタビネズミの個体数変動様式の相違点を述べよ/漁獲後資源量一定方策の長所と短所を述べよ/「泳がせ捜査」と未成魚保護の関係を述べよ/成長乱獲と加入乱獲の違いを述べよ

講義予定に戻る


No.2 サバの過去を読む(持続可能な漁業、非定常最適化)
持続可能な漁業 1995年京都宣言 世界の漁業の現状
毎年同じ漁獲量でよいのか?(非定常最適化)参考書第5章
サバはいつ、何歳から取るべきか (未定乗数法・繁殖価・収穫価)(Matsuda et al.1999)
セタシジミ回復計画(size-structured model)
参考書:松田裕之「『共生』とは何か」(現代書館)
Matsuda H, Yamauchi A, Matsumiya Y and Yamakawa T(1999) Rproductive value, harvest value, impact multiplier as indicators for maximum sustainable fisheries. Environmental Economics and Policy Studies2:129-146.
問題:漁獲後資源量一定方策の長所と短所を述べよ/「泳がせ捜査」と未成魚保護の関係を述べよ/成長乱獲と加入乱獲の違いを述べよ

講義予定に戻る


No.3 エゾシカと順応管理(不確実性、危険性の周知、ヒグマ問題)
エゾシカ保護管理計画 北海道庁・道東地区保護管理計画釧路支庁・エゾシカ対策
不確実性 Feedback管理
齢構造、成長段階モデル 変動環境とTuljapurkarの理論
adaptive managementとmonitoring
参考書:梶 光一・松田裕之・宇野裕之・平川浩文・玉田克巳・齊藤 隆(1998)エゾシカ個体群の管理方法とその課題. 哺乳類学会誌 38:301-313.
問題:齢組成、体長組成、成長段階組成の違いを述べよ/Leslie行列から個体数増加率はどのように求められるか/環境変動は個体数増加率にどのような影響をもたらすか/エゾシカ保護管理計画の特長と課題を述べよ

講義予定に戻る


No.4 生態系管理と環境影響評価の諸問題(愛知万博問題)
生態系と生物多様性を守る基本理念=世代間持続可能性 環境基本法
景観=遷移と自然撹乱のつりあいがもたらすモザイク(双六理論)
非定常性(阪神タイガース問題)、
反証可能性(愛知万博オオタカ問題)、
生態系影響評価
参考書:原科幸彦編『環境アセスメント』(1994,放送大学教育振興会)
課題0)以下の用語を説明せよ。(あ)持続可能な開発sustainable development(い)事業者アセスメント(う)何もしない代替案(え)眺望景観と生態学的景観1) 持続可能な開発は将来にわたって可能と思うか、またその根拠を述べよ  2) 今後の日本の経済と環境政策への期待と、理想像を述べよ。

講義予定に戻る


No.5 絶滅の恐れとは何か(マグロの絶滅確率、植物Red Data Book)
マグロの絶滅確率 The IUCN Red List of Threatened Animals
植物Red Data Book 環境庁の頁
環境Risk論(中西準子先生の個人頁所沢ダイオキシン問題)、
イボニシとTBTのrisk/benefit
参考書:鷲谷いづみ・矢原徹一(1996)『保全生態学入門』(文一総合出版)、中西準子(19955)『環境リスク論』(岩波書店)、J.V.ロドリックス(1994)『危険は予測できるか』(宮本純之訳、化学同人)
問題:risk(危険度)とは何か、実証科学との比較で述べよ/なぜレッドリストは全個体数でなく、成熟個体数で評価するのか/損失余命とは何か/人口学的揺らぎと環境揺らぎを説明せよ

講義予定に戻る