東京大学農学部 

「水圏生態学」(講義の前半担当) 松田裕之

ご質問、ご意見は 164 東京都中野区南台1-15-1 東京大学海洋研究所 松田裕之まで 

tel.03-5351-6494 fax.03-5351-6492  email:matsuda@ori.u-tokyo.ac.jp 

(工事中)

ねらい: 講義の前半は、行動生態学(イワシはなぜ群れるのか、マグロの卵はなぜ小さいのか)と群集生態学(多種共存機構、種間関係、環境問題)についての考え方と応用例を紹介する。各講義の後で質問票を提出すること。試験は行わない。

前半部分の参考書:
桑村哲生・中嶋康裕編『魚類の繁殖戦略』(1,2)(海游社、19961997
堀道雄編『タンガニイカ湖の魚たち:多様性の謎を探る』(平凡社、1993
松宮義晴『水産資源管理概論』(日本水産資源保護協会、1996
田中昌一『水産資源学総論』(恒星社厚生閣、1985
CWクラーク『水産資源管理論:生物経済モデルと漁業管理』(田中昌一監訳、恒星社厚生閣、1988
松田裕之「『共生』とは何か」(現代書館、1996)第5章

講義予定:(日付、内容を変更することがある)

10/15 最適採餌行動と被食回避行動(魚はなぜ群れるのか、食い分け、住み分け、襲い分け)

10/22 最適な卵の大きさ(大きなイワシも小さなイワシも卵径は同じ?)・

10/29魚類の性転換(性比の理論、性淘汰、進化ゲーム理論)

11/5ウミガメは成熟後も成長を続けるか?イカは産卵すると死ぬか?

11/12種間関係、群集生態学、漁業生態系模型

11/19 非定常生態系 

11/26 未定

なお、後半は西田周平先生が担当される。


No.1 最適採餌行動と被食回避行動

最適採餌時間optimal foraging time:「分別ある捕食者prudent predator」説

個体淘汰individual selection説 イワシはなぜ群れるのか、マグロはなぜ群れるのか

さまざまな被食回避行動anti-predator traits(隠れ家、擬態、警戒音、毒物、トゲ、群れ、一斉羽化)

食い分け、住み分け、襲い分け

魚の右利きと左利き

参考書: 松田裕之「『共生』とは何か」(現代書館)
問題:「分別ある捕食者」説と「持続可能な漁業」の共通点を述べ、乱獲が起こる理由を論ぜよ/ 講義で述べなかった被食回避行動の例を挙げよ/天敵特異的な防御と、非特異的な防御の例を考えよ
頁の初めに戻る
       


No.2 最適な卵の大きさ

大きなマイワシも、小さなマイワシも、卵の大きさは同じ

マグロの卵はイワシよりも小さい

同型配偶isogamyと異形配偶 anisogamy

カニの交尾前ガード

参考書:山村則男『繁殖戦略の数理モデル』(東海大出版、1985) 、巌佐庸『数理生物学入門』(共立出版)
問題:植物の種子も、親個体の大きさにかかわらずほぼ一定といわれる。その理由を説明せよ/共有地の悲劇について、同形配偶の配偶子の大きさを例に説明せよ/交尾前ガードを行う生物と交尾後ガードを行う生物を数例ずつ挙げ、両者の共通点と相違点について感じるところを述べよ。
頁の初めに戻る
         


No. 3 性比の理論、性転換、性淘汰
性比はなぜ1:1か?
アカシカの産み分けと寄生蜂の産み分け
魚類の性転換、雌雄同体、卵の取り引き
性淘汰の理論
参考書
Jメイナード・スミス『進化とゲーム理論』(1982、寺本英・梯正之訳、産業図書)
問題:日本人の出生時性比は
21:20と少し男が多い。その理由を述べよ/寄生蜂が雌雄を産み分ける機構を述べよ。アカシカはどうか/多くのカタツムリは雌雄同体である。その理由を考えよ/多くの動物では雌より雄が美しい。その理由を述べよ。

頁の初めに戻る       


No.4 ウミガメは成熟後も成長を続けるか?イカは産卵すると死ぬか?

一回繁殖semelparityと多回繁殖iteroparity(両掛け戦略bet-hedging)、

限定成長determinate growthと無限成長indeterminate growth

参考書: 松田裕之「『共生』とは何か」(現代書館)
問題:環境保全の指標としてSimpsonの多様度指数を使おうとした。何か問題はないだろうか/種数の多い群集ほど結合度が低いという主張
に対して、最近反論が出されている。結合度の計り方に、何か問題はないだろうか/Apparent competitionExploitative competitionについて説明せよ。


頁の初めに戻る  

No.5 種間関係、群集生態学、漁業生態系模型

群集の多様度指数、複雑さ

多様性と安定性の逆理

間接効果と非決定性

3つの種間関係

「共生」とは何か?


頁の初めに戻る  

No.6 非定常生態系(3すくみ説、非定常がもたらす多種共存)

浮魚資源の大変動(バッタと同じか?3すくみ説)マイワシの話魚種交替

鯨はどれだけの魚を食べているか?

国際捕鯨委員会と改訂管理方式

生態系管理と順応的管理


頁の初めに戻る  
前半(松田担当分)レポート課題:魚類学、水産学関係の教科書、雑誌、普及書、新聞記事などで、「種の保存のため」など、本講義で説明した内容(個体淘汰説に限らず、何でもよい)にそぐわないと思われる記述を探し出し、その出典と概略、それに対する批評を試みよ。逆に、講義内容自身への科学的な批判を試みてもよい。あるいは、講義に関連する内容を探し出し、その出典と概略、それに対する意見を述べよ。他人の意見の受け売りでなく、自分の意見を明確に述べているレポートを待っている。締め切りは年末、分量はレポート用紙5枚程度、電子メールによる提出も歓迎する(優秀作品は提出者の同意と協力が得られればこのホーム頁に掲載する)