持続可能な漁業
 

 定常資源の持続的利用:いつも一定の漁獲量で獲りつづける。
 非定常資源の持続的利用:資源が多い年には多く、少ない年には少なく、漁獲後資源量が一定になるように獲る。これをConstantEscapementStrategy(CES)という。
 下記は、1975年のマサバ太平洋集団に対して、実際の漁業と、水産庁が推奨していた資源の33%を獲りつづけた場合と、20%を獲りつづけた場合と、漁獲後資源量一定方策を比較したもの。産卵調査から毎年の資源量と再生産率を推定して比較した。
 実際の漁獲はもっとも資源を乱獲する漁業だったことが示唆される。それなのに、漁獲量は実際の漁業は必ずしも多くない。むしろ20%漁獲ならば同じくらい漁獲量を確保しながら資源を保全できたことを示唆される。CESは資源を保全して漁獲量を増やすことができるが、1981-1985まで5年間の禁漁に耐えないといけない。(松田1995参照)
 松田裕之 (1995) マサバ資源の初期生残率の年変動と資源管理方策, 水産海洋研究

成長乱獲growth overfishingと加入乱獲recruitment overfishing
 成長乱獲は小さいときに獲らずに、もっと大きくしてから獲るほうが(途中で死んで取り損なう損失を考えても)漁獲量が増えるのに、小さいうちに獲ってしまうこと。泳がせ捜査をしないことに相当。つまり、警察は麻薬取引などで、現行犯で下っ端を逮捕するより、捕まえずに尾行して組織の全容を明らかにしてから摘発することがある。これを泳がせ捜査という。
 加入乱獲は大人になる前に獲ってしまうため、次世代の資源が確保されず、持続可能ではないこと。言わば、種もみを残さないことに相当。

乱獲の理由:経済的にも損であるはずの乱獲が、なぜ行われるか。 (松田1995参照)
1)成長経済:毎年少しずつ持続可能に獲りつづけるより、一挙に漁獲して大きな利益を得てから、その利益を別の産業に投資するほうが得なことがある。その生物資源の内的自然増加率に比べて経済成長率が十分大きな場合に成り立つ。自然界には増加率が異なる生物が共存している。長寿で、産子数が少ない、鯨のような資源が典型である。
2)共有地の悲劇:一人で利用していれば末永く大切にする資源も、自由に誰でも獲れる場合には先を争って漁ってしまう。自分だけが持続可能な漁獲量を守っていても、他の漁業者が乱獲すると資源は減りつづける、相手は長期的には損をするが短期的には得をする。自分は短期的にも長期的にも損をしてしまう。これは囚人の板挟みと呼ばれる関係にある。