環境生態学序説
持続可能な漁業,生物多様性の保全,生態系管理,環境影響評価の科学

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訂正

本書で引用したまたは関連するweb site

問題提起(私の講義で学生から出た主な質問をまとめたものです。私の回答は本書末尾にあります)

読者感想欄(投書先は松田まで)


                            先頭に戻る
IUCNの
Redlist categoryの定義
1995年「
ストラドリングストックと高度回遊性魚類資源に関する国際協定
1997 環境庁版植物レッドリスト判定基準に準ずる
C言語プログラム
北海道環境科学研究センター
エゾシカ保護管理計画のページ
環境庁 
第8次鳥獣保護事業計画の基準(改定素案)
1995年
食料安全保障のための漁業の持続的貢献に関する京都宣言及び行動計画
日本鯨類研究所鯨類の食物消費量について
米国シーワールドの
クジラのページ
国際捕鯨委員会 WHALE POPULATION ESTIMATES
「兵庫県立人と自然の博物館」の
自然選択体験ゲーム
IPCC
(Interngovermental Panel on Climate Changeのホーム頁
1992年リオデジャネイロ宣言(Agenda 21/Earth Summit/ 国連環境開発会議UNCED)
環境庁
環境影響評価関連情報
波田善夫教授の愛知万博海上の森に関する
ホーム頁
岡敏弘助教授の中池見絶滅リスク・便益評価
FAOReview of the state of world fishery resources: marine fisheries
地球上の二酸化炭素濃度の上昇(
Kieling曲線
1999年4月20日の
参議院国土・環境委員会
問題提起回答22 横浜国大の中西準子教授のページ
「予防原則について」


                            先頭に
問題提起
(本欄末尾に追加の質問と回答あり。追加質問、回答補足募集中)
(1) 幼魚をとりまく環境変化などの影響は,3すくみ説にはどう入っているか?
(2) バッタは爆発的に増えるが,これは害虫か?変動はカオス(決定論的模型による不規則変動)か?
(3) サバを150万トンで管理する話と,第1章の魚種交替の話はどう関係するのか?
(4) 非定常な資源を一定量残して獲れば,漁獲量の年変動は大きくなり,市場は大混乱するのではないか?
(5) 漁業管理計画をたてる場合,それが漁業者への負担や生態系への影響をどのように考慮するべきか?
(6) 「一定獲り残し」方針では産卵親魚数を正確に知る必要があるが推定はどうするか.漁業の情報から資源量を推定するなら,禁漁を続けたあとはどうやって漁業を再開するか?
(7) 大量絶滅は食糧不足,人口減少を招き,またもとのバランスに戻るのでは?
(8) クジラは絶滅の危機にあるのか?
(9) ミナミマグロの個体数はどうやって推定するか?
(10) ワシントン条約の附属書Iに載れば,トロは食べられなくなるのか?
(11) 第1章で紹介したマイワシは絶滅危惧生物の基準Aに当てはまらないのか?
(12) 穀物ではなく,雑草からアルコールを作って車を動かす技術を開発すれば悔いのない政策といえるのか?
(13) 気づいたときには手遅れだから,ヒノキやマツのように,まだ絶滅の恐れが一笑に付されるようなものまでリストに載せるべきではないか?
(14) クマが人を殺すのは悪で,人がクマを殺すのは悪ではないというのは人間の身勝手ではないのか?
(15) 個体数変化が急激過ぎたら順応的管理はできないのでは?
(16) カラスは害鳥ではないか?なぜ勝手に獲っていけないか?
(17) 不確実性と非定常性の違いは何か?
(18) フィードバック管理では,政策は後手後手に回るのではないか?
(19) エゾシカ管理で性比が1:10くらいになると,遺伝的劣化などが問題になることはないのか?
(20) 駆除,狩猟は猟師に任せているのか?
(21) 管理に失敗したら見なおせば良いというが,失敗の責任は大きく,どう責任をとるのか?
(22) 予防原理は産業界に受け入れられるのか?
(23) 天然痘やゴキブリは保護すべきか?
(24) 生物多様性を守るのが友達をたいせつにするのと同じだというのは,結局,生物学に倫理的価値を持ち込んでいるのではないか?
(25) 日本人の少子化が問題になっているが,利己的遺伝子と矛盾しないか?
(26) 自家受精を繰り返すと,遺伝的多様性は失われるのではないか?
(27) 利得表の値自身をプレーヤが変えるようなゲームはあるか?利得表が変われば板挟みも解消するか?
(28) 自然保護の理念が人間中心主義というのはいやな気がする.人間中心主義では自然を守るのに限界はないか?
(29) 遺伝資源は進化するからこそたいせつではないか?
(30) よそのメダカを勝手に放流してもとからいるメダカと交配するのが好ましくないようだが,これはメダカが絶滅危惧種だからか?人間だと国際結婚は遺伝的によいと高校で習った.メダカと人間で何が違うのか?
(31) 種は絶滅しかけると密度効果により増加率は上がるのか?それとも生殖能力が落ちるのか?
(32) 同じアユという種なら,琵琶湖産のものを他の河川に放流してもよいのでは?
(33) 放っておいても絶滅する生物は守る必要はないのか?トキの保護が大きく報道されているが,トキの保護にどんな意味があるか?
(34) レッドリストを細かく決めても,実際に役に立つのか?
(35) シデコブシとかオオタカとか,有名な種だけ守れば良いのか?
(36) その生息地の遺伝子を用いたクローン生物を補給すれば,遺伝的汚染にはならないのではないか?
(37) バイクに乗るという趣味的リスクと生活のリスクを同じリスクで考えていいのか?
(38) TBT規制をしても生態系を守るべきだというが,船の燃費が悪くなればCO2濃度が上がり,環境に悪いのではないか?
(39) 混乱を最低限に抑えて情報を公開する方法はどういうものがあるか?所沢ダイオキシン濃度の発表はどうするのが良かったのか?
(40) 所沢の野菜の報道は行政の対応を促した点で悔いのない政策だったのではないか?
(41) 仮想評価法で評価すると,自然の価値を人間中心に計ることにならないか?
(42) 途上国が発展するためには,ある程度の環境破壊はやむを得ないのだろうか?
(43) 毎年故郷の雪が減り,温暖化を実感している.しかし地球はそんなことでは潰れない.「地球に優しい」のではなくて,困るのは人間だから「人間に優しい」と言うべきではないか?
問題提起追加
以下は、中澤港氏の書評をもとにしている。たいへん丁寧に読んでいただき、数多くの誤植を教えていただいた。お礼申し上げる。また、誤植の多い第1刷を買われた読者にお詫び申し上げる。彼のホーム頁自身もぜひ参考にされたい。彼のコメントが的外れに見えるとすれば、私が第2刷で彼の意見をもとに訂正したからである。なお、以下の質問内容は簡略化した。

  1. 数学以外の科学では,論理的に厳密な証明はほぼ不可能で,反証可能性をなるべく多く備えることが経験的価値の高い良い仮説であるというのがポパーの立論だったと思う.やや反証可能性の価値を低く書きすぎではないか.☆物理学者が目指すのは検証可能性であろう。それがほぼ不可能な場合、私も反証可能性を重視しているつもりだ。
  2. 4-1で,個体数が不明なのに減少率が50%以上というのはどういうデータなのか? ☆IUCNのA基準も、個体数が不明で減少率がわかる生物に適用する。個体数のトレンドがわかっていても絶対数が不明な場合はよくある。
  3. レッドリストの絶滅確率を計算する計算機プログラムで、一様乱数の発生法が書かれていない(ソースをみると乗数が69069の単純な乗算合同法であり,M系列とかメルセンヌツイスターほど良くはない)☆ご指摘どおり、精度のよい乱数ほど望ましい。実際に環境庁版レッドリストで用いたプログラムは私が書いたものではなく、ソースは公表していない。しかし、考え方は共通している。
  4. 個体数予測の方法で,p.65の最後に書かれているような補整は,必要かもしれないが,こんなに何段階も補整をしたら幅が出過ぎるのではないか。表5-1のような計画は安全側に振れ過ぎるような気がするのだが,どうなのだろうか?☆平均値自身の不確実性と年変動はどちらも必要で、たしかに幅が出すぎる。もしも100年後まで同じ精度で管理し続ければ、リスクはこれより低くはなく、過剰に安全とはいえない。むしろ、想定外のリスクがあるはずだ。ただし、将来はもっと推定精度が上がり、捕獲圧調整も厳格にできるとすれば、リスクは減っていくだろう。
  5. 7章。ドーキンスの利己的遺伝子で「ハタラキアリやハタラキバチに見られる不妊雌」が説明されるという記述は,たしかに間違いではないが,もともとはHamiltonの血縁淘汰説だという記述を入れておくべきではないか? 性比1:1の数理モデルはFisherから始まるはずだし,ESSについてMaynard-Smithに触れないという法はなかろう。☆すべてご指摘どおり。
  6. CVMみたいな方法以外にamenityを定量的評価に取り込むにはどうすればいいのか。☆どなたかぜひ回答を試みていただきたい。
  7. p.115で,「マラリアに耐性をもつ鎌状赤血球が維持されるのも…(中略)…頻度依存淘汰の例である」とあるが,鎌状赤血球は超優性の例であって,頻度依存淘汰ではないだろう。☆第2刷よりこの記述を削除します。
  8. (どこまで自然を守るかは価値観の問題であり、その線引きは難しい)その意味で,p.124からの「合意形成と科学者の使命」には共感するが,それなら青空MLに参加して欲しい。☆青空MLというのは始めて聞きました。検討します。
  9. 農林水産業国有化論も一理ある。ぼくは(農林水産業を)教育の一環として組み込んでみたらいいんじゃないかと思っているが、どう思うか☆たいへん有力な考えだと思う。環境問題も、結局は研究よりも教育の問題だという意見はうちの院生からも聞かれる。彼らを研究者に育てたいのだが、まだ説得できないでいる。


                            先頭に
読者感想欄(工事中)

「多様性と安定性の逆理」ですが、本文を読んでいる限りは気がつかないのですが、なぜ説明なしに競争モデルを使うのですか?

 逆に、図6-6が競走モデルの結果だと知ってから読むと、その下でループの話が出てくるのは奇異に感じられます。Stone and Roberts (1991)のように多種競争系では間接的な相利関係が現れることを言いたいわけではないんですよね?

また、せっかく相互作用行列をランダムに決めて平衡状態を求めているのに、なぜ改めて乱数から群集行列を求めて安定性を計算するのかがよく分かりません。先に求めた平衡状態の周りで線形近似すればよいのではありませんか?

 群集行列をランダムに決めるやり方は、時にもとの相互作用の強さとして非現実的な値を引くので、できるならば避けるべきであると私は考えています。(02/2/6大阪女子大学教授難波利幸氏より。ご指摘ありがとうございました)

松田先生の中池見の項では、泥炭湿地についての評価がありませんでしたが、どのようにお考えでしょうか。湿地の上で展開される生物の多様性への評価は多くの方が早くから指摘されていましたが、中池見が50メートルにも及ぶ、泥炭層からなる湿地であることへの評価は、コスタリカでのラムサール会議へ私たちの代表として高木文堂さんと斉藤慎一郎さんが出かけて、訴えて以来、注目してくださる世界的研究者が現れました。イーストロンドン大学のリチャード・リンゼイ先生が中池見に来てくださり、高くその価値を指摘してくださって、この湿地の保全の重要性を新たに認識した私たちです。(02/4/16福井県の森田智子氏より。関連サイト。ご指摘ありがとうございました。)