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1992年のCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約:通称ワシントン条約)京都会議で大西洋クロマグロを附属書へ掲載し,輸出入を制限する提案が議論されて以来,まぐろ類のCITES附属書掲載やIUCN(国際自然保護連合)の出している絶滅危惧種をまとめたレッドリスト掲載のうわさは続いていた.そして,1996年には,IUCNのレッドリストへ5種類のまぐろ類が掲載された.そのころから,レッドリストや附属書への水産資源の掲載の是非は,国際的な争点となり,IUCNやCITES自身により基準(掲載の判定基準)の見直しが進められた.この見直しの中で,まぐろ類をはじめとする水産資源に対して,陸上動植物と同じ基準で適用することの妥当性に関する議論が起こった.
IUCNやCITES基準の見直し作業では,本書の執筆者を含む日本の研究者も重要な役割を果たした.本書では,各執筆者が水産学の基礎理論を学んだ若手研究者,試験場担当者などを念頭に,絶滅危惧種の判定基準など保全生物学の基礎理論をわかりやすく紹介することを目的とする.
執筆者一覧
金子与止男, 石井信夫, 平松一彦, 高橋紀夫, 西田勤, 魚住雄二, 矢原徹一, 加藤秀弘, 中野秀樹, 岸田達, 田中栄次, 勝川俊雄,
原田泰志, 松田裕之
| 執筆者 | 頁 | ||
| 1 | ワシントン条約(CITES) | 1 | |
| 1.1. | ワシントン条約の歴史と制度 | 金子与止男 | 1 |
| 1.2. | 関連条約と国内法制度 | 石井信夫・金子与止男 | 4 |
| 1.3. | 最近の状況 | 石井信夫 | 9 |
| 1.4. | 水産資源管理とワシントン条約 | 金子与止男 | 15 |
| 2 | 資源管理の考え方 | 23 | |
| 2.1. | 予防原則と予防的取り組み | 岸田達 | 23 |
| 2.2. | 順応的管理 | 勝川俊雄 | 29 |
| 2.3. | 生態系管理 | 高橋紀夫 | 36 |
| 3 | 水産資源管理 | 44 | |
| 3.1. | MSYとその問題点 | 平松一彦 | 44 |
| 3.2. | MSY以外の管理 | 平松一彦 | 48 |
| 3.3. | 許容漁獲量制度について | 平松一彦 | 52 |
| 3.4. | 水産資源学と保全生態学 | 平松一彦 | 57 |
| 3.5. | 鯨の改訂管理方式 | 田中栄次 | 60 |
| 3.6. | 種苗放流の野生集団への影響 | 原田泰志 | 67 |
| 4 | 絶滅危惧種保護 | 88 | |
| 4.1. | 絶滅の要因と絶滅に至るプロセス | 高橋紀夫 | 88 |
| 4.2. | 存続と絶滅のプロセスに関連する理論と概念 | 高橋紀夫 | 92 |
| 4.3. | 個体群存続可能性分析(PVA) | 高橋紀夫 | 96 |
| 4.4. | 絶滅リスク評価のための数理モデル | 高橋紀夫 | 99 |
| 4.5. | 絶滅危惧種の保護対策 | 高橋紀夫 | 105 |
| 4.6. | 環境団体との対話 | 松田裕之 | 111 |
| 5 | IUCNレッドリストとCITES附属書掲載基準 | 126 | |
| 5.1. | 2001年IUCNレッドリストカテゴリー | 松田裕之 | 126 |
| 5.2. | マグロは絶滅危惧種か?絶滅のリスク評価をめぐって | 矢原徹一 | 138 |
| 5.3. | IUCNレッドリストの水産資源への適用をめぐる問題点 | 魚住雄二 | 149 |
| 5.4. | CITES附属書掲載基準 | 石井信夫・金子与止男 | 156 |
| 6 | ケーススタディ | 180 | |
| 6.1. | 鯨類の資源生物学的特性と資源管理の概要 | 加藤秀弘 | 180 |
| 6.2. | まぐろ類 | 西田勤 | 187 |
| 6.3. | タイマイ | 金子与止男 | 215 |
| 6.4. | サメ類 | 中野秀樹 | 223 |
| 7 | あとがき | 水産庁 | 233 |
| 8 | 引用文献 | 235 |
訂正(初版)
ii頁 3.3許容漁業量制度について → 3.3許容漁獲量制度について
iv頁 執筆者一覧に 原田泰志(三重大学) を追加
223頁 執筆者 (中野秀樹) を追加