生態リスク学研究室（松田研究室）紹介

updated on April 11 2019　更新　

どんな研究が出来るか　さまざまな研究者との共同研究　研究室の選び方
松田は2023年3月に定年を迎えます。2020年4月の博士課程，2021年4月の修士課程の入学者が最後となります。国費留学生等で博士課程入学を目指す方は研究生の時期があるので，2019年秋の受け入れが最後となるでしょう。
I will retire in March 2023.

　＜研究室概要＞
2007年度から5年間，横浜国立大学と国立環境学研究所はグローバルCOE「アジア視点の国際生態リスクマネジメント」を実施しました（成果紹介書籍）。松田がプログラムリーダーを務めました。生態学を学んだ者，環境科学を学んだ者，数学や工学を学んだ者，人文･社会科学を学んだ者、いったん社会人となって再び学問を続けたい者のうち，下記に即した志をもつ者を歓迎します．
「5年先の流行を先取りする！」　今流行のことをやっていても，君たちが学位を取る頃に下火になっていてはだめ．5年後の流行を予測しないといけない．それは，全く新たな課題ではなく，むしろ，今まで地道に続きながら，光が当たっていない課題のそばにある．未解決の問題とその答への展望を正しく見据える者だけが見ることができる夢である．具体的には以下の通り．これらを最先端で研究できる研究室のつもりである．私一人では頭と体がいくつあっても足りないので，志ある者の参加を切望する．

横浜国大環境情報学府では、2015年春から改組を予定しています。7月の特別選抜などは実施しません。
　いずれにしても、統合的海洋管理副専攻プログラムを受講できます。文理融合の海洋管理のメニューをそろえています。国内外のインターン制度も完備しています。

＜研究室運営方針＞

自由放任（名教自然）につきます。毎週セミナーがあり（原則木曜または金曜の4，5時限目），順番に進捗や関連文献を紹介し，議論します。あとは学生側から面談申し込みがあって進めます。その他，院生の自主勉協会があります。（研究室&出身者リスト　セミナー日程，就職・進学先情報等あり）。コアタイムは平日の10-17時ですが原則として事前に面談予約をお願いします。

＜その他注意事項＞研究室への配属を希望する方は、配属調整前に研究室を訪問し、私や研究室の大学院生などと直接話をしてみることをお勧めします。より詳しくはhttp://ecorisk.ynu.ac.jp/matsuda/またはミラーサイト 参照。

＜研究テーマ＞一粒で二度おいしい＝さまざまな研究者などと連携した共同研究・指導。私は数理生態学者だが，過去の私の院生はさまざまな研究室に修行に行き，さまざまな技術を身につけている．私が共同研究を進めるには，多角的に物事を学ぶ院生が欠かせない．なお，以下の＊は松田研究室出身者である。

• 数理生態学＝全国にいる日本数理生物学会のメンバー。研究室PDの佐々木茂樹博士*など
• 化学物質の環境リスク評価・管理＝産総研の保高徹生博士，岩崎雄一博士*（産総研にはほかにも私の前任者の中西準子氏，益永茂樹・中井里史・松田（MNM）研究室出身者が大勢いる）。キーワードは全国一律の濃度基準(公害型)から地域生態系に即した保全策（生態系管理型)へ！
• 猛禽類の個体群解析＝ダム事業や風力発電事業の環境影響評価などを通じて，真の猛禽類保全の考え方を探る。水源地環境センター，長崎大学山口典之准教授*，日本気象協会の島田泰夫博士*，その他風力発電事業者，コンサルタント業者。
• 野生生物管理，知床世界遺産（シカ，クマ），屋久島世界遺産（シカ），丹沢（シカ），滋賀県（カワウ）など＝北海道環境科学研究センター，鹿児島県環境技術センター，滋賀県水産課西森克浩氏*など
• 野生生物管理，知床世界遺産の海域管理＝東京大学大気海洋研の牧野光琢教授*，中央水研の竹村紫苑研究員（松田研外部協力者）など
• 気候変動と生態系サービス理論＝みずほ情報総研の内藤秀治氏*，渡辺絵里氏*など
• ユネスコMAB(人間と生物圏)計画，世界自然遺産＝本学の酒井教授，環境省岡野隆宏博士（松田が主査で論文博士）など。松田は松浦晃一郎元ユネスコ事務局長主催の「逞（つよ）い文化を創る会」メンバー（2010年より）。
• 水産資源管理＝水産研究・教育機構の柴田泰宙博士*，秋田鉄也博士*，西嶋翔太博士*，井嶋浩貴博士*，日本水産中央研究所の永野一郎博士（松田研門弟）など
• 環境影響評価＝環境省，JPECの神野氏*など。松田は愛知万博，辺野古米軍基地，風力発電など多くの委員を務めてきた。深海鉱物資源探査の環境影響評価では本学SIP事業によりISO標準を策定中。
• 海洋の統合的管理＝本学の中原裕幸客員教授など。洋上風力発電，深海鉱物資源など
• 魚類の進化生態学＝水産研究・教育機構の森田健太郎博士*
• 環境問題の人間的側面（Human Dimension）＝立命館大学の桜井良准教授*，防衛大学ほか非常勤講師の秋庭はるみ博士*など
• 植物の絶滅リスク評価＝矢原徹一九大教授をはじめとする植物分類学会専門委員会のメンバー
• 上記のほか、大学に所属しない研究者の指導を受けたい博士課程の入学も考慮します。本学周辺には、そのような研究者がたくさんいます。委細面談。

どんな研究ができるか

　過去に私が書いたことと比較してみよう。　2010年3月 2007年7月　2005年10月　2004年3月　2003年

　今流行のことをやっていても，君たちが学位を取る頃に下火になっていてはだめ．5年後の流行を予測しないといけない．それは，全く新たな課題では なく，むしろ，今まで地道に続きながら，光が当たっていない課題のそばにある．未解決の問題とその答への展望を正しく見据える者だけが見ることができる夢 である．具体的には以下の通り．これらを最先端で研究できるのは，私の研究室をおいて他にはない．私一人では体がいくつあっても足りないので，志ある者の 参加を切望する．

• 生態リスク管理の理論：現在の世界の生態リスクの環境基準（たとえば重金属・有害化学物質濃度)は、人間の健康リスクに基づく環 境基準の指針を真似たものだった。貴重な生態系が残る場所も、大都会も、基本的には同じ基準を定めるため、河川の底生生物のために、飲料水より厳しい重金 属の濃度基準が定められている。これでは、日本の名水も守れず、｢どぶ川」に過剰な制約をかけることになる。他方、鳥獣保護行政、許容漁獲量制度などでは 私の生態リスク管理の理念がほぼ完全に取り入れられている。鳥獣保護から化学物質まで通じる、統一した｢生態リスク管理」の理念を構築すべきである。その ための鍵となる概念は、「個体の保護から個体群評価,生態系評価」である。そのためには、人文・社会科学者との連携が必須である。生態リスク管理はシステム・リスク・合意形成の科学なのだから。
• 順応的・生態系管理の理論：生態系管理は，世界中で成功例が一つもないと言ってもよい．今やっていることはキーワードの羅列だけで実体がない（2005年から科研費取 得）．本気でこれをやるには，生態系管理に共通した数理モデルの研究と，成果の展望なく始まってしまった諸事業に果敢に飛び込むことがたいせつ．私のもと には，順応的管理（私と鷲谷さんが訳した）と生態系管理の何が危ないかの理論的知識と，すべての生態系管理の実例を研究するチャンスが転がっている．生態リスク管理のメッカ＝横浜国大を生態系管理のメッカにしよう！
• 予防原則の見直し：予防原則は1992年リオ宣言で国際的に認知されたが，統一的な定義がなく，従来の科学との矛盾を置き去りにして定着している．私は予防原則の再定義によりそれを解決したい．そのために文理を超えた広範な環境学者、医学者との議論を行った（2004年科研費取 得）予防原則を科学的に再定義し，それに則った環境政策を実現していくことは，あらゆる地球環境問題の未来を左右する．横浜国大から世界に向け，新たな予 防原則を発信しよう！リスクを減らせばよいというものではない。リスク対リスク、リスク対便益、リスク対環境正義を包括的に考慮するとともに、将来検証に 耐えうる予防原則の適用が必要である。そのための鍵となる概念は、｢第2種の誤り」である！
• 反対称捕食を例にした種分化の理論：京大の堀道雄教授が提唱した右利き左利き理論は，群集生態学と進化生態学に全く新しい世界を開きつつある（海外の流行を追う生態学者には全く見えていない課題）．私とともに，堀さんを世界史に残そう！（2004年度まで科研費取得）

一粒で二度おいしい＝さまざまな研究室と連携した共同研究・指導

大学院生を募集しています。
　独自の研究課題を考える学生は、その課題を尊重します。その場合、数理的考え方や論文のまとめ方は助言できますが、野外調査や実験計画については別の方の助言を求めてください。
　私が用意する研究課題を希望される場合、「私の研究」「私の主張」をご覧ください。別掲のような課題があります（2003年3月現在）

　予備知識。特に制限はありません。私のホーム頁を参考にして下さい。また、私が行っている講義を参考にして下さい。
　私が関わっている上記の問題の中には、社会的にも重要なものがあります。博士や修士課程だけでなく、卒業研究でもそれに答える研究を行うことは可能です。たいせつなのは、問題の本質をつかみ、多方面の意見を尋ね、明快な数理的研究を行って具体的に提言することです。多くの学生、研究者の助けを必要としています。

　学生にやる気があり、使命感と能力があれば、研究は進みます。学生が優秀ならば、教官は安心して社会に提言する時間的ゆとりができます。たとえ学生たちが直接社会に提言する研究をしなくても、学生たちが私の社会活動を支えているのです。

研究室の選び方

　インターネット時代になって、ウェブサイトを見てたずねてくる学生が増えました。ときには、「なぜ私の研究室を訪ねたか？」動機がわからない人もいます。大学院に進学する際、どんな研究室を選んだらよいか、私の評価基準を紹介します。

１）どんな研究をしているか？　あなた自身がどんな研究をしたいのか？　それはなぜか？

　流行している分野や単語（たとえば、進化、環境リスク、保全、管理など）のうち、自分の気に入った単語をウェブで検索しても、本当にやりたい研究ができるかどうかわかりません。あなた自身、自分のやりたいことがわかっていない場合が多いのです。流行を追うなら、今の流行より、あなたが学位をとる5年後に盛んになる分野を選ぶべきです。研究室を訪ねたら、その展望を聞くべきでしょう。そして、自分がやりたいと思っていたこととあっているか、考えてみましょう。
　社会に役に立つ研究もたいせつですが、まず、それを好きになれるかどうか、面白いと思うかどうかが先決です。すきになれない研究は、役に立つとしても、長続きしないでしょう。

２）研究活動が活発か？　

　研究室の活躍ぶりを調べるには、まず(英語の)論文リストを見ればよい．論文リストがない教官，査読付原著論文数の少ない教官の下にいても，これから評価を受ける院生が研究者になることはできない。教官のリストだけでなく、研究室のサイトも覗いてみて、助手や大学院生などの論文リストもみるべきです。
　すべて教授・助教授との共著になっている研究室では、独立した研究はやりにくいかもしれません。

３）研究室の雰囲気はよいか？

　学生の人数も重要です。人数があまりに少ない研究室は、何か原因があるはずです。人数があまりに多い研究室は、先輩後輩の間で指導が行き届かなければ、教官の指導は徹底できません。新しい教官にとって重要なのは、最初の学生を育てることです。
　単刀直入に、そこに所属している大学院生にメールや電話をして尋ねてみればよいでしょう。