2019年度 横浜国立大学公開講座 受講生募集
「リスクと生きる:環境リスク学入門」(無料)(大学公式サイト

講師 松田裕之 横浜国立大学教授

場所 横浜国立大学教育学部8-203教室*  8月9日10:30-17:00


ご感想等はBlogのコメント欄に記入ください。

時刻 講義内容 参考資料
10:30-11:50 A風力発電と鳥への影響 E風力発電と環境影響評価 詳細 岩手講演  個体群学会発表 朝日論座拙稿
13:00-13:45 @気候変動と共有地の悲劇 詳細
13:50-14:50 C知床世界遺産地域と札幌市のクマと人の共存 詳細 朝日論座1 2
15:00-16:30 Bミナミマグロ絶滅リスク評価  D漁業法改正とクロマグロの資源管理 詳細 松田HP 朝日論座1 
 16:30-17:00 Eアンケート作成,討論 詳細  

*教室変更のお知らせが不徹底で,一部の方に大変ご迷惑をおかけしたことをお詫びします。

受講対象者 環境コンサルタント会社、シンクタンク、行政担当者、自然保護団体
募集人数 50
受講料 無料

趣旨・目的等 横浜国立大学は以前から環境リスクの研究教育に取り組み、リスクゼロを目指すのではなく、いかにリスクと折り合いをつけるかを多くのプロジェクトの中で提案してきました。その中から、「気候変動対策と共有地の悲劇」、「風力発電と鳥への影響」、「知床世界遺産地域のクマと人の共存」、「漁業法改正とクロマグロの資源管理」について最新の研究成果を紹介します。
講 座 内 容 松田裕之「生態リスク学入門」(共立出版)の内容説明
本には書けないリスク管理の具体的検討事項の紹介をまじえて、実践的なリスク管理の秘伝を伝える。上記の具体的事例を用いて、生態リスクの評価と管理の観点から環境生態学の知見と技法を実践的に応用する。Microsoft Excelによる数値計算もあわせて学習する。受講者のメールリストを作成し、事後もメールによる討論を続けたい。
 A  あわら風力発電の合意形成を中心に、風力発電による鳥衝突リスクの評価と管理方法を共に考える。そのうえで、日本の環境影響評価制度の問題点を風発事業を中心にともに考える。
 B  緩和策と適応策の統合が望ましいが、緩和策は典型的な共有地の悲劇問題(説明する)。国家が決めた貢献(NDC)の有効性をともに考える。
 C  ヒグマ問題は知床世界遺産委員会からは何の勧告も受けていないが、地元の深刻な問題。観光客とカメラマンによる人慣れ、漁業者とヒグマの共存の世界遺産上の認識、今後の課題を共に考える。合わせて、札幌市など市街地に出没するヒグマにどう対応すべきかをともに考える。
 D ミナミマグロやクロマグロが絶滅危惧種に指定されている理由と問題点を説明する。そのうえで、改正漁業法により科学的な資源回復目標が決められ、それをもとに漁獲可能量(TAC)とその各漁業への配分が決められるようになった。定置網で漁獲枠を大幅に超過した問題と、これから捕獲枠が導入されようとするホッケの問題を紹介し、ともに考える。
 E  最後に、行政と科学者の関係、その問題点、「理想像」などをともに議論する。講義を聞いて,「科学者のあるべき姿」についてご自身の感想でもよいのでご意見を聞かせてください(匿名可)同意された方については受講者のメールリストを作成し、事後もメールによる討論を続けたい。

参考 2009年の公開講座、2001年の応用生態工学会福岡講座も参照

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講義中の質問へのメール回答(一部以下の*のご質問と回答は,勝手ながら私のサイトでも質問者匿名にて紹介させていただきます))

受講者の皆様
風力発電と鳥への影響
*Q:風力発電建設が電源設備として、それはどメリットのあるものだとは感じられませんでした。
A:確かに日本ではまだ風力発電量は微々たるものですが、ドイツではかなり多く、太陽光と風力で発電量が余ると揚水発電に回しています(http://www.de-info.net/kiso/atomdata01.html 参照)。2010年までの日本では揚水は夜間行っていましたが、今では正午頃に行い、夕食時の消費電力が最大になっています。

気候変更と共有地の悲劇
*Q:・日本の目標には、志、思いの様なものが感じられないのは何故か?
A:日本のNDC(各国が決める貢献)はhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/ondanka/kaisai/dai30/yakusoku_souan.pdfにありますが、それなりに野心的で、むしろ達成できないことを私は心配しています。各国の過去との比較、実際の一人当たり排出量で比較はhttp://www.rite.or.jp/news/events/pdf/akimoto-ppt-kakushin2017.pdf をご覧ください。

クマと人との共存
*Q:・クマに限らず野生動物の生活圏に入り込んでいっているのは人間のほうで首都圏でも捨てネコ、ハト、カラス、ムクドリも増え続ける個体数に問題が生じています。
A:以前は人は里山、クマは奥山という「幻想」がありましたが、それはクマが人を恐れているからで、人類が存在しなければクマも低地に住むでしょう。そして、人間が利用したり駆除したりしないために、おっしゃる通り、他の多くの野生鳥獣が市街地でも増えています。

マグロ問題と漁業管理
*Q:・養殖の研究成果があがれば良いと思います。
A:完全養殖は一定のシェアを占めるようになりましたがまだ高価です。ヨコワを生け捕りにして育てる畜養も盛んですが、供給過多による経営難が懸念されます。

科学者の在り方について
*A:以下のご感想ありがとうございました。意を強くいたしました。今後とも,何かお気づきの点がありましたらお気軽にメールください。
・現状をデータと推定も含めて明らかにし、世間一般人が問題とすべきかどうかを判断させる手助けをする存在であってほしい。
・様々な問題を解決する上で行政が専門家に頼る場合は多いと思いますが、そうした所で学問が関わっていることを多くの方が知らないと思います。
・行政や市民にしなければならないことをしっかり伝えでもらえる科学者を育ててほしい。
・科学者という役割にこだわらず(?)強みを活かして問題解決に役割を果たしていただければと思います。
・どれがどんだけ影響するのかを計算するのが「科学者」そして判断、政策は「社会」とても印象深く思いました。
・科学者がデータを基に現在の政治風土を改革する力になる所に期待します。
・持続可能な社会、資源のためには若い世代への環境教育が重要なのではないかと考えています。

 その他,他にも多くの感想などをいただきました。私としても大いに励みになりました。この場を借りてお礼申し上げます。
 最後に,会場変更のお知らせが不徹底で,大変ご迷惑をおかけしたことをお詫びします。

(以上)