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12.26 管理と保全の変動モデル 新プロシンポジウム
12.2 (講演記録)野生生物保護管理とリスク評価 コウノトリの郷 シンポジウム
11.1 「競争」と「共生」は両立するか 「アーク都市塾」
森ビル
10.27 Comments on Symposium at Population Ecology
10.26 コクチバスの性比について 個体群生態学会
10.24 エゾシカ保護管理計画=モデルと現実= 鯨類研究所
10.15 [wildlife 4221] 条件付き捕鯨を認めた自然保護団体?
2001.10.15 「奄美自然の権利訴訟」控訴審意見書 生物多様性保全の生態学的根拠について
10.7 ○捕獲情報を用いたエゾシカ個体群動態の将来予想 哺乳類学会 琉球大学
8.30 Type-II error, precautionary principle, and accountability
in ecological risk assessment (福岡統計学国際シンポ)
8.25 2001年度応用生態工学福岡基礎講座
8.15 21世紀 私たちの環境 野生の行方(1)エゾシカ北海道新聞2001年8月15日 13面
7.23 回遊性浮魚類の魚種交替の動向 日本水産油脂協会講演会南青山会館
5.18 「捕鯨論争」WIN講演会 (フォレスト本郷)
2001.4.4 故松宮義晴先生を偲ぶ会
4.1 マサバ資源管理方策の検討 (水産海洋シンポジウム,東京水産大)
Subject: [wildlife 4221] 条件付き捕鯨を認めた自然保護団体?
Date: Mon, 15 Oct 2001 19:04:34 +0900Green
group backs limited whale hunt条件付き捕鯨を認めた自然保護団体
東大海洋研の松田裕之です
2001年7月27日付インターネット上のプレスリリースによると、WWF本部は、商業捕鯨と鯨肉の国際商取引を認め、それらを管理しなければ、IWCが将来商業捕鯨を再開し、再び非持続的な捕鯨に路を開く責めを負うことになるだろうと述べました(資料1)。WWF消息筋は、今年7月に行われた国際捕鯨委員会(IWC)で南太平洋と南大西洋の鯨類サンクチュアリ提案が否決されたこと、及びすべての鯨類の捕獲枠を0にする提案が否決されたことに失望しているようです。捕鯨国日本を支持する国が将来増え、商業捕鯨が再開される恐れがあると述べています。 同日付けのBBCのインターネット上の記事(資料2)によると、WWFのシェファード氏は今でも捕鯨を禁止すべきだと考えています。が、この主張が近い将来国際的に受け入れられなくなることを想定しているようです。「管理なき」捕鯨再開を阻むために、管理下の商業捕鯨を認める立場に転換したことが窺えます。さらに彼は、来年のIWC総会でもサンクチュアリや捕獲ゼロを可決できなければ、来年5月のIWC下関総会で、IWCがワシントン条約を無視する可能性が非常に高いと警戒しています。適切な管理体制ができなくても、2002年のワシントン条約締約国会議(CITES)で南半球のミンククジラが附属書IからIIに格下げされ、国際商取引が部分的に認められるかもしれないと述べたそうです。この記事ではさらに欧州在住の事情通の人の匿名発言を紹介し、捕鯨を再開しても捕鯨国はそうたくさんは獲らない、英米豪蘭などの国々は実情をもっと知るべきである。捕鯨問題は有力な集票源であり、科学の問題ではないと述べたそうです。
この記者は、去年の記事で,南半球のミンククジラは個体数が多く、絶滅の恐れから程遠い状況にあることは周知の事実と明言しています(資料3)。WWFが科学の問題を離れ,内心捕鯨に反対しつづけることは、私にとっては誠に遺憾ですが、彼らがなぜいま方針転換を表明したのか,十分に理解できません。商業捕鯨を管理下に置くことはIWCの合意事項であり、すでに改訂管理方式(RMP)は1994年に科学委員会で合意されています(資料4)。あとは、監視方法などで合意し、IWC総会が科学委員会の合意を受け入れるだけです。彼らの方針転換の表明が、実質的にどのような建設的な提案をもたらすかは不明であり,捕鯨国に自信を与えるだけのような気もします。
いずれにしても、彼らの方針転換は、生物資源の持続的利用のための管理方策を考える私にとって、歓迎すべきものです。管理の輪の中に、理性的な自然保護団体が参画することは、何ら問題がありません。
IWCには反捕鯨・非捕鯨国も多数加盟し、捕鯨国と反捕鯨国の合意形成の機会が保証されています。日本においても,WWF本部の上記方針を受け、捕鯨問題において、科学者、捕鯨関連業界、環境団体が共同参画できる場を設ける必要があります。
しかし、具体的な参画の方法が不明確です。参画の機会を設けることは、水産庁だけの責任ではありません。むしろ、どのような参画の場が考えられるかを私たちが考えるべきです。また、WWF日本委員会を始めとする日本の反捕鯨団体が、WWF本部の上記の意見をどう考えているかも知りたいところです。
これは鯨だけの問題ではありません。WWFが言うとおり、CITESで(差し迫った絶滅の恐れがないとわかっているミナミマグロのようなものも載せる)過度な予防原理を採用しない附属書掲載基準が2002年11月にできることは、十分考えられます。CITES事務局が10/15まで(多少遅れても受け取ってくれると思います)にpubliccommentを求めていた原案(Review
of the criteria for amendment of AppendicesI
and II=資料5)は、私たちがIUCNの絶滅危惧種判定基準見なおしのときに主張したこと(資料6)に、概ね合致しています。事務局がこのような案を出すことは毎度のことで,これから「復活折衝」が始まるわけですが、CITESが持続的利用を認めるような附属書掲載種の判定基準を決めれば、自然保護団体は全面禁止を訴えるだけでなく,管理に関与しないといけなくなります。今回のWWFの方針転換は、その兆しかもしれません。
皆さんのご意見,ご感想をお待ちしています。
参考資料
1)WWF Press Release 27 July, 2001 IWC
fails the whales http://www.panda.org/news/press/news.cfm?id=2436
2)Green group backs limited whale hunt,
Friday, 27 July, 2001,by BBC News Online's
environment correspondent Alex Kirby
http://news.bbc.co.uk/hi/english/sci/tech/newsid_1458000/1458234.stm
3)Analysis: What price sustaining a species?
Monday, 10 April, 2000,By BBC News Online's
environment correspondent Alex Kirby
http://news.bbc.co.uk/hi/english/world/newsid_708000/708172.stm
4) International Whaling Commissionhttp://ourworld.compuserve.com/homepages/iwcoffice/iwc.htm
- Conservation
5) CITES: Conf. 12.XX Criteria for amendment
of Appendices I and II)
http://www.cites.org/eng/notifs/2001/037.shtml
http://www.cites.org/eng/notifs/2001/037A.shtml
6) The IUCN Criteria Review: Report of the
Marine Workshop http://www.iucn.org/themes/ssc/redlists/marine/marine3.htm
松田裕之