2003年のメッセージ 松田裕之 

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他の年の書簡 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997

12.10 talk 絶滅リスクと環境影響評価 化学物質管理勉強会
12.3 talk 漁業管理とリスク評価−サバの未来を読む−化学物質管理勉強会
12.1 横浜国大への転任の挨拶
11.30 talk Robustness of a feedback control rule with switching fisheries in process and measurement errors
11.29talk 生物の絶滅と資源(第9回自然史学会連合シンポジウム)
11.28 talk 生態系をベースとした鯨類の資源管理 (東大海洋研シンポ「生態系保全と水産資源の持続的管理:可能性と展望」
11.26 talk 多種相互変動に関する理論的考察(東大海洋研シンポ 「多魚種資源管理の諸問題」
11.23 talk 持続可能な漁業は海獣なくして成り立つのか(シンポジウム「人と獣の生きる海−北海道の海生哺乳類管理を考える−」於北大)
10.23 サバ操業制限実施とマグロ乱獲問題
10.16 talk PICES Ecosystem Management
9.26 talk 化学物質と予防原則の会 (CITES掲載基準における予防原則を巡る各国意見)
9.25 シカの食害対策と個体数調整について ([wildlife 7088]投書)
9.21 talk 哺乳類保護管理における個体数推定の精度とフィードバック管理の問題点について(哺乳類学会公開シンポジウム)
9.13 talk 埼玉県生態系協会勉強会「ふえる魚へる魚−私たちは何を食べたらいいのだろう」 
9.11 『チョムスキー9.11』映画 in 中野サンプラザ
9.1 abundanceの訳語について
2003.7.25 マグロ問題
7.21 talk サバの未来を読む 増えるか減るか、どうしてか(東大海洋研、海の日一般講演会 スライド 音声付スライド
7.17 talk 国連海洋法条約と地球サミット後の捕鯨管理−予防原則と生態リスク−(日本造船学会海洋工学シンポジウム特別講演)
2003.7.11 禁じ手の科学 「複雑系組織論」(Axelrod著、ダイアモンド社)書評
6.19 talk 生態リスクと予防原則 (予防リスク医学会電子シンポジウム招待講演 音声つきスライド 音声のみ
2003.5.30 ダムは壊すべきか? 松田裕之・森田健太郎著 補遺
2003.5.18 野生生物保護基本法案への疑問
4.19 talk 海洋生物資源の変動機構(アムール・オホーツクプロジェクト研究会)
3.28 Why do American People support President Bush?
3.28 talk Risk Management in Wildlife Management. (予防医学リスク学会国際設立大会)
3.20 talk 湿地生態系の保全と復元の道を探る(松田裕之・波田善夫、日本生態学会シンポジウム)
3.15 talk 京大生態研センター シンポジウムコメント
2003.3.6 自然再生推進法 基本方針案 に対する意見
1.20 変動する資源の管理と保全(東大海洋研新プロ報告書)
2003.1.1 謹賀新年


9.25 シカの食害対策と個体数調整について ([wildlife 7088]投書)

wildlifeの皆さん
東大の松田です.

([wildlife 7087]=投書者はご署名をお願いします)
|県は23日までに日光市など12市町村を対象に、シカの食害軽減と自然生態系の回
|復を目的とした県シカ保護管理計画の3期計画を策定した。
|防護柵の設置や調査研究体制の整備を積極的に進めることを盛り込んでいる。
|下野新聞社
|(いよいよ、個体数調整という駆除法式も、早くも限界を迎えたようです、)

 日光市では個体数調整をしないのでしょうか?
「シカの食害軽減と自然生態系の回復を目的と」するうえで,個体数調整は現時点で必須です.
 日光ではありませんが,日本植物分類学会は2003年 3月 31日付けの「南日本・西日本の絶滅危惧植物保全のためのシカによる採植防止の要望書」を関係機関宛に提出したと聞いています.その文面には,
「絶滅危惧植物種をシカの採植から保全するためには長期的な対策と緊急避難的な当面の対策が考えられます。長期的な対策として,シカの個体数調節,シカの食料となる他の植物資源の確保など総合的に問題の解決を図る必要性があります。緊急避難的な対策として絶滅危惧植物種をシカから隔離することが考えられます。そのためには絶滅 危惧植物種の生育地または最近まで生育地だった場所に柵を設置し,シカを排除することが望ましいと思われます。」
 すなわち,上記学会の見解としても,シカの個体数調節の必要性を強調しているのです.もちろん,「駆除」(現在,この言葉を行政は用いていませんが)だけで解決するとは,1999年改正鳥獣保護法で導入された現在の個体数調整管理方式の担当者の誰も主張していません.
 上記見解は,単に農林業被害対策としてだけでなく,生態系保全のために,シカが放置できない状況であることを示しています.上記要望書によると,
・鹿児島県屋久島では1970年頃には普通に見られたヤクイヌワラビやヤクシマタニワラビ(ともに絶滅危惧IA類)がほとんど見られなくなった。
・霧島山系御池ではキリシマイワヘゴが絶滅したと思われ,タヌキノショクダイやキリシマタヌキノショクダイ(共に絶滅危惧IA類) が確認できない。
・ 熊本県市房山では,林床植物が食べ尽くされ,南限のキレンゲショウマが 現在確 認できない。
・ 奈良県大台ヶ原・大峰山系ではコウモリソウ(近畿地方では,大峰山系の みに分 布,分布南限),オオダイトウヒレン(近畿地方での分布は局所的)ミ ヤマトウヒレ ン(大峰山系と四国に隔離分布)が激減しています。
 これら以外にも多くの事例が列挙され,「これらの県では,絶滅危惧植物種を保全するため至急 対策を講じる必要があると思われます。」と述べています.
 個体数調整によるシカ生息頭数の減少には数年以上の時間がかかります.北海道の道東エゾシカ保護管理計画においては,1998年に「時期尚早」という反対に抗して「緊急減少措置」を実施しました.当時は個体数を過小推定していました(注1)が,それでも大発生に歯止めをかけて減少に転じさせることはできました.他方,スコットランド(http://www.news.scotsman.com/scotland.cfm?id=1054202003)ではアカシカが少なくとも40万頭以上に大発生し,「制御不能」といわれる状況が出来しているそうです.
 農林業被害は10年かけて解決してもよいかもしれません.しかし,絶滅危惧植物への対策はさらに緊急を要します.
 いくら可猟区で昼間にシカを捕獲しても,シカは国有林や国立公園内に逃げ込み,そこの貴重な植生に大きな打撃を与え続けています.禁猟区をすべて柵で囲うことはできませんし,それがよいこととはいえません.国有林と国立公園内のシカ密度調整は緊急の課題なのです.
 絶滅危惧植物の自生地を柵で囲うだけでは,彼らを守ることはできないのです.

松田裕之

注1 1998.11.18[wildlife 840]松田の投書
1994年3月時点での12万+-4万というのは・・・過小評価ではないかという議論があるのは知っています。私たちもそれを視野に入れ、かつ獲りすぎることのないように緊急減少措置の目標捕獲頭数と実施年数を考えています


9.11 『チョムスキー9.11』映画 in 中野サンプラザ

 9.11 『チョムスキー9.11』映画 を見に行った。
 あれだけ人が来るとは思いませんでした。映画とトークの中身も去ることながら、大勢の「普通の」老若男女が来るのを見たことが、最大の財産です。
 私にとって、チョムスキーとは、学生時代に言語理論(計算機理論でも使います)を学んだときに知った学者ですが、3/16-18 国際理論生物学ワークショップが福岡であったときに英国人のMartin Nowak が「言語の進化」と題した講演を行い、その時間の半分以上をChomskyの研究紹介にあてていたのが妙に印象に残りました。後でNowak氏になぜいまChomskyかときいたら、やはり戦争に反対だとか。
 当たり前かもしれませんが、あからさまな不正義の戦争に反対する人は大勢います。戦争を止めることはできなかったが、それ以降も、相変わらず反対運動が元気なのに安心しました。
 今年の2/17に流したメールです。この通りにことが進んでいると期待しています。
「追伸:ひょっとすると、アメリカはイラクを攻撃しないかもしれませんね。市民の力は予想以上に大きいことがある。1ト月前にはほとんど展望がなくても、がんばれば何とかなることもあります。ただし、最後の決断は米国大統領が決めることです。無理に攻撃するとかえって歴史の流れを変えてしまうかもしれません。自然保護も同じです。諫早湾の干拓を止めることはできなかったが、干拓工事開始時の「ギロチン」映像が何千回もテレビで流れたことで、その後の日本の環境行政は大きく変わりました」


[jeconet:7633] Re: Q:intensity の日本語
jeconetの皆様
 東大海洋研の松田です。

|density(密度), abundance(数度)のようにはいかない
水産学ではabundanceを豊度と訳していると思います。
岩波の生物学辞典には植物社会学や群落の用語として数度が載っていますが、おそらく水産学者は訳語を変えないでしょう。
 下記によると、豊度は(水産や植物学の例は載っていないが)abundanceの訳語として中国語でもたくさん使われているようです。富裕度や分布量という訳語も見えます。
http://www.powerdict.com/DDE8J-2.htm (豊の字が簡体字なのでご注意)
用語はできるだけ統一したほうがよいと思いますが、現実に、分野間で多様性があります。ご参考まで。
 重要なのは、まず用語の定義だと思います。これこそ、分野間でことなるのは避けられません。


2003.7.11 禁じ手の科学 「複雑系組織論」(Axelrod著、ダイアモンド社)書評

 本書の第1著者、ロバート・アクセルロッドは、たとえて言えばピカソのような科学者だ。それまで専門家の間で認められていない着想を自由に活かし、新たな分野を切り開いてしまう。それは、単なる型破りではない。よく読むと、既成概念の神髄を誰よりも綿密に踏まえていることに気づかされる。
 本書で論じる人間の組織を、著者は複雑適応系と位置づける。組織構成員(エージェント)がそれぞれ工夫を凝らして適応するなかで、その相互作用がもたらす結果の複雑さを取り除くのではなく、そのダイナミズムを積極的に活用する方法を考えるのだという(x頁)。この新たな組織論には、進化生物学、コンピュータ科学、社会デザインという3つの土台がある。
 複雑系について書かれた本は数多い。けれども、どれもわかりにくい。世の中複雑だと言って読者を煙に巻き、さまざまな専門用語を定義し紹介するだけのような感があった。しかし、本書はなかなかよくわかった。
 本書は、複雑系科学を予測の道具に使うという「科学の常道」をあっさり放棄し(19頁)、研究の世界にではなく、実践の世界に影響を与えることを意図した(210頁)。「型破り」とはそのことだ。複雑な世の中でいかにうまく対処すべきか、むしろ、複雑だからこそうまくいくという複雑適応系の真髄を堪能できる。「である」でなく、「すべき」が多用されていることからも、それがわかる。
 アクセルロッドの前著「つきあい方の科学」(松田訳)はゲーム理論の最良の入門書の一つである。囚人のジレンマゲームという数学的な枠組みがはっきりしていて、主張の骨子は論理的に明快だった。生物進化や第1次世界大戦の塹壕戦の話にそれぞれ1章を充てるなど、話の展開もゆっくりしていた。本書なら、バングラデシュのグラミン銀行に1章を充てると期待しながら読み進めたが、当ては外れた。
 それに比べて、本書はやはり中身が複雑だ。「探査中心と知識利用」のバランスという難解な用語が随所に登場するなど、複雑系についての予備知識がなければ、何を言っているのかわからずに途中でつまずいてしまうかもしれない。社会組織論と生物の比喩が書かれていても、この比喩が論理的に成り立つか、首をかしげることもある。
 社会組織は、各エージェント(自ら考え行動する主体)が自己の目的達成のために探査中心(創意工夫を凝らすこと?)と知識利用(先人の成功に学ぶこと?)を使い分ける。そのバランスによって、社会がうまくいくかどうかが決まるというのが本書の第一の教訓だ。独創に偏りすぎると伝統の良さを失うし、学習にこだわると進歩がない。皆が同時に同じようにふるまってもいけないし、あまりばらばらでもいけない。第二に、社会の繋がりは、身内同士の密接な繋がりと、よそ者どうしのほどほどのつきあいのバランスが必要だ。第三に、うまく行った人のやり方をほかの人に真似させる「戦略の淘汰」と、人そのものを代える「エージェントの淘汰」のバランスが必要だ。成功者のどんなところがうまく行っているのか、実はよくわからないこともある。それでも、とりあえずその人の振る舞いを適当に真似したり、うまくいっている組織のリーダーのやり方を真似させたりすることも、場合によっては有効である。本書の「複雑性を活かす」という主張は、強いて言えば、これら三つのバランスにまとめられる。
 これらを通じて、特に重視しているのは変異である。バリエーションを多様性と訳しているが、変異と訳すほうが妥当だろう。変異は、必ずしも同時に複数の戦略があることを意味しない。いずれにしても、変異は同時にいろんな型のエージェントがある多様性と、突然変異を頻繁に生み出す複製エラーの両方によって供給される。どちらもたいせつである。情報革命により、今まで遠い存在だった人同士のつきあいが進んでいるが、その結果として個人のつきあう相手の多様性が増えているが、地域の伝統や言語など、世界の多様性が急激に消滅しつつあるという(120頁)。
 本書にもある通り、現代は不確実性の時代である。本書には触れていないが、環境問題への対処も同じことだ。一九九二年の地球サミットで合意された予防原則では、実証される前に科学者が社会に口を出すことが求められるようになった。これは従来の科学者にとって、してはならない型破りの「禁じ手」だった。しかし、過去のルールにこだわる必要はない。たいせつなのは、新たな科学者として守るべき良識を作ることだ。予防原則後の環境科学では、それがまだできていない。
 私は保全生態学者として、複雑でよくわからない生態系と人間との持続可能なつきあい方を考える中で、新たな科学的手法を欲していた。特に、合意形成の手続きについては、私自身は科学でなく、実践の対象としてしか考えていなかった。本書にはリスク論があまり登場しないが、合意形成は、複雑適応系の組織論という、より明確な科学の枠組みが提示されている。これは参考になった。たとえば、30年先の自然の姿を目的にすえるだけでなく、さまざまな保全事業では数年後に評価可能な目標を定める。これはさまざまな利害関係者を説得する民主主義の責務だと思っていたが、目的を適応的に達成するために欠かせないツールだということがわかる。
 かつてアクセルロッドが「つきあい方の科学」を著したとき、相手が裏切ってきても協力的でもうまくやれる万能のつきあい方は存在しないことの数学的証明を、囚人のジレンマゲームという枠組みで示した。ふつうの科学者ならそれで終わるところだが、彼は、コンピュータプログラムの形でつきあい方の戦略を公募し、互いにつきあわせて最高の利得を得る戦略という、全く新たな形で互恵主義の有効性を「証明」した。私は、彼の型破りと、従来の科学で解けない常識を説き明かす彼の手腕を見た。このとき、私は彼にノーベル平和賞に値するとメールを書いた。誉めたつもりだったが、返事はなかった。現代社会で回答不能とされているさまざまな矛盾も、彼なら「説いて」くれると期待する。


 野生生物保護基本法案への疑問        2003年5月18日

 野生生物保護基本法案を市民立法として今国会に上程する動きがある(野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク)。鳥獣保護法,種の保存法を包括する法律が必要なことは,私自身もかねてより同意している。しかし,持続的利用を排除した形で基本法を作ることには,賛成できない.生物多様性保全と持続的利用の調和は、生物多様性保全条約にも明記されていることであり、国際的な環境団体の使命である。持続的利用の観点を抜きには、水産資源保護法はもちろんのこと、鳥獣保護法を包括する基本法さえできない。そのような法律には実効性がない。このままでは、市民に法律はつくれないという、残念な評価を招くだろう。
 法案は、上記団体のサイトに3月素案と5月素案が掲載されているが、国会上程を検討されていると言う4.25第2次素案とは、以下の点などで内容が大きく異なる。
1.第2次素案には、3月素案や5月素案に載っている野生生物の定義がない
2.第2次素案では基本原則第1に「野生生物の保護は、人間に多くの恵沢をもたらす生態系が野生生物を重要な構成要素として成り立っていることにかんがみ、生態系が健全で恵み豊かなものとして将来にわたって維持されるように適切に行われなければならないものとすること。」とあるのに、5月素案では「野生生物の保護は、生態系が健全で恵み豊かなものとして将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。」とあり、人間に多くの恵沢をもたらすものを守るという(環境基本法に記された)視点がない。
 サイトに載っている案と国会で法案提出前に取りざたされている案が一致せず、議論の内容が不透明である。法案作りの際には、そのプロセスの透明性を高めることが必要である。
 上記のすべての素案では、種、個体群、個体の保護を同列に扱っているが、個体を捕獲して利用すれば死ぬ.持続的利用の観点なしに,個体の保護といえば,野生生物を利用できなくなる.なぜ,家畜を殺してもよくて野生生物を殺してはいけないのか.魚は養殖にすべきなのか?
 また,この法律の目標が外来種を守るのか取り除くのか,野生生物の定義が不明確で、よくわからない(「野生」の定義は、どの条文にもない).人間にさまざまな危害を加える野生生物に対してどのように対処するのか、よくわからない。
 殺傷についての倫理規定を盛り込んでいるが,これは本来「野生」動物に限らない.では野生生物を駆除せず生け捕りや去勢などで対処すべきかといえば,合意が得られない.それは外来種も実験動物も同じ.その辺のバランスをとった条文が必要である。
 来年の鳥獣保護法全面改訂にどう対処するつもりなのか。この法案には管理に対する条文がない。いまだに鳥獣保護法の科学的計画的管理制度に反対しているとすれば,管理計画なしの予察駆除をなくすこともできない.
 生物多様性保全および持続的利用と整合性のある法案を作ることが、すべての野生生物に対象を広げた鳥獣保護法などを包括する基本法の大前提である。

(野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク
http://www.asahi-net.or.jp/~zb4h-kskr/wildlife/
3月案http://www.asahi-net.or.jp/~zb4h-kskr/wildlife/kihon-hou.html
5月案http://www.asahi-net.or.jp/~zb4h-kskr/wildlife/kihon-gairyaku.html
5月案における定義
第二 定義
 野生生物とは、動物界、植物界(藻類を含む)、菌界(地衣類、変形菌類を含む)に属するすべての野生の生物種を指す。
 野生生物保護とは、野生生物の捕獲採取、譲り渡し、生息地である生態系の破壊、化学物質による汚染、外来種の導入等の危機要因を取り除き、野生生物の種の保存・回復、生態系の保全・再生を図るものとする

生物の多様性に関する条約http://www2.odn.ne.jp/cdu37690/tayousei.htm
目的  この条約は、生物の多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用及び遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分をこの条約の関係規定に従って実現することを目的とする。
「持続可能な利用」とは、生物の多様性の長期的な減少をもたらさない方法及び速度で生物の多様性の構成要素を利用し、もって、現在及び将来の世代の必要及び願望を満たすように生物の多様性の可能性を維持することをいう。

環境基本法http://www.env.go.jp/hourei/
目的 ・・・もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。

自然保護団体WWFの使命http://www.wwf.or.jp/aboutwwf/mission.htm
 WWFの使命は、次の3つの活動によって、地球の自然環境の悪化を食い止め、人類が自然と調和して生きられる未来を築くことです。
・世界の生物多様性を守る
・再生可能な自然資源の持続可能な利用が確実に行なわれるようにする
・環境汚染と浪費的な消費の削減を進める
(以上)


2003.1.1 謹賀新年

2003 昨年は、私の身の上にもいろいろなことがありました。
 岩波科学10月号のリスク特集、10月のボローニャでの国際予防医学予防原則シンポなどで、予防原則とリスク管理の内外の対立を目のあたりにしました。この両方が必要(ただし、予防措置は不要)という私の主張と同じ人は、どうやら世界でもあまりいないようです。
 エゾシカ保護管理計画に加えて、渡島半島ヒグマ対策会議にも関わるようになり、北海道の野生生物管理との縁がますます深まりました。エゾシカの個体数は、もう一歩で解決に向かうと期待していますが、有効利用が軌道に乗るまで予断を許しません。
 捕鯨論争では、WWFジャパンが4月に対話路線を打ち出しました。12月にはグリーンピースジャパンまで今季の抗議船派遣中止を伝え、日本での対話路線に挑んでいます。去年の今頃とは隔世の感があります。私は、国際捕鯨委員会科学委員会日本代表団とWWFジャパン自然保護専門委員を兼務する前例なき立場になりました。生物多様性保全と持続的利用を両立させるために、今後とも微力を尽くすつもりです。
 秋に2カ月間トロントに滞在しました。単一種に関する順応的管理(フィードバック管理)ではなく、種間相互作用を考慮した順応的管理の数理的研究を行ってきました。順応的管理は、生態系の仕組みを理解せずに機械的に適用してしまうと、安心できないものであると感じました。
 沖縄の石西礁湖、近畿の大台ヶ原など、さまざまな生態系管理の事業に関わりながら、今や国策に取り上げられた順応的生態系管理の理論と指針を作っていきたいと思います。
 今年もよろしくお願いします。