松田裕之の書簡 (無断リンクお断り)  

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2002

12.25 「野生生物を救う科学的思考=絶滅リスク評価の考え方」リスク問題研究会
12.20 新プロ「海洋生命系のダイナミクス」 保全と管理の理論
12.19 千葉大文学部講義「科学者は未検証の学説を どう社会に提言すべきか?」
12.10 『保全と復元の生物学:野生植物を救う科学的思考』(文一総合出版)補足資料
12.6 「ABC規則の課題と展望=保全と持続的利用の両立を目指して」資源管理談話会.日本鯨類研究所
12.2 鯨類資源の管理 Management of Whaling
11.11 Persistence and fluctuation of lateral dimorphism of fishes (at U. of Toronto, Ecolunch Seminar)
10.24 Importance of Type-II Error and Falsifiability" at Bologna, Italy
9.25 持続可能な漁業と海洋生態系保全 JEDIC学習会
9.21 渡島半島ヒグマ個体群のフィードバック管理 数理生物学シンポジウム(函館)
9.17 Conover & Munch SB (2002 Science)とAbrams(2002Am.Nat)の論文紹介
9.14 21世紀水産を考える会緊急フォーラム「野生生物管理と持続的利用」
8.5 生態系管理とスイッチング捕食(奈良女子大学セミナー)
7.19 気仙沼講演会(サンマリン気仙沼 ホテル観洋1330)
7.4 ゲーム理論と協力の進化(自然選択体験ゲーム、囚人のジレンマ演習) 講義資料
2002.6.28 野生生物とリスク管理について
6.23 生存捕鯨について
6.23 Difficulties & hopelessness in ecosystem modeling, Comments on Future on Marine Animal Populations
6.21 What is NaGISA?
2002.5.27
 絶滅危惧種の判定基準
5.24 「海洋」生態学における「ケア」
5.24 BSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)対策について
2002.5.22 Can abundant minke whales not be used? Comments on Peter Yodzis(2001) TREE 16:78-84
2002.4.24-5.9 IWC下関大会 雑感
4.24 予防原則とリスク評価について
2002.4.7 捕鯨問題での対話の流れを止めることはできない
2002.4.6 予防原則とリスク評価について
2002.3.30 生態学とは−生態学が解き明かす世界−
2002.3.23 万博環境影響評価の実施計画書、評価書、修正評価書の問題点について
2002.3.20 私が2年前から捕鯨問題に係り始めた訳
2002.3.11 愛知万博 環境影響評価会委員の辞任について
2.28 食糧問題と水産業の未来=サバの未来を読む 岩手県さけ・ます増殖協会講演会 岩手県盛岡市
2.21 数理シミュレーションによる個体群管理技術の検討と生態系への影響評価 (コクチバス対策事業会議、中央水研)
2.13 「漁業の乱獲がなくならず、鯨が獲れないのに、エゾシカ大量捕獲やヒグマの捕獲と有効利用が合意できるわけ」(西水研)
1.29
第10回自然共生河川研究会(名古屋・逓信会館13-17)
1.24 サンマはいつまで豊漁か? 自然保護を考える会(根室)
新年の挨拶


2002.1.1
2002 謹賀新年
昨年は21世紀の始めの年にもかかわらず、世紀末以上に暗い話題が世間を埋め尽くした年でした。
 今年5月の国際捕鯨委員会IWC下関総会を一つの歴史的結節点にしたいと思います。自然保護団体にも持続的利用に向けた妥協を探る動きがあります()。6月には日韓サッカーW杯があり、IWC総会で韓国犬食文化を擁護するよう、水産庁と日本政府に働きかけています(ご支援お願いします)。家畜を食べて、ペットと野生動物を食べてはいけないという「西欧的」価値観の押し付けは、悪しきグローバリズムです。
 北海道は、今年から希少種であり、人身事故が急増したヒグマの春季捕獲を12年ぶりに再開します。C型肝炎の特効薬とも言われる熊胆はワシントン条約で国際取引が全面禁止されています。駆除した熊を適正管理する方途、多くの人が住む渡島半島での熊と人の共存を目指すフィードバック管理を成功させたいと思います。高速道路を通るクルマよりもクマが多いとは失言ですが、熊に襲われる人より車に轢かれる人が多いのです。
 今年は、狂牛病問題にも取り組んでみるつもりです。生態系のつながりを重んじ、自然を守れと言う人の多くは、狂牛病騒動以降牛肉を食べないことで牛肉関連業者が破産することに鈍感です。業者の多くは被害者です。生産者と消費者のつながりを忘れてはいけない。それは生態系のつながり以上にたいせつなものでしょう。農水省の対応は批判されるべきですが、青息吐息の牛肉業者を潰してはいけません!
 一昨年末に出版した『環境生態学序説』(共立出版)はおかげさまでもうすぐ第3刷を出します。誤植を指摘していただいた方々に感謝します。(
 昨年1月発行の雑誌『生物科学』で「鳥獣保護法改正問題」を特集しました。環境省から自然保護団体まで原稿を寄せていただき、今年の鳥獣保護法の抜本的見直しに向けた議論の醸成を目指しました。
 2月発行のミニコミ誌『水情報』で「自然の権利運動」の特集を組みました。自然保護は人間のためという自説と、自然の権利運動を担う市民、法学者、弁護士などの意見交換を試みました。
 エゾシカ保護管理計画は緊急減少措置が4年目を迎え、何とか大発生に歯止めをかけ、減り始めました。あと何年かかるか、予算と根気の闘いです。道全体の鹿は、まだ例の高速道路上の車より多いでしょう。
 7月に、始めて国際捕鯨委員会IWC科学委員会に参加しました。ロンドンまで出かけて、欧米人は本当に捕鯨が嫌いで、反捕鯨が環境派としての自己証明と見なしていることがよくわかりました。
 9月には奄美大島を訪ね、奄美の黒兎生息地とされるゴルフ場建設予定地を視察しました。10月に福岡高裁宮崎支部での奄美自然の権利訴訟控訴審に、原告弁護団に依頼されて「生物多様性保全の生態学的根拠」について意見書を出しました。()
 『数理科学』12月号に「生態系管理=システム・リスク・合意形成の科学」と題する論説を掲載しました。
 今年もよろしくお願いします。
2002年元日                 松田裕之


2001

2001.4.4 故松宮義晴先生を偲ぶ会
2001.10.15 「奄美自然の権利訴訟」控訴審意見書 生物多様性保全の生態学的根拠について


2000

2000.12.22 管理と保全の変動モデル
2000.10.27 海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画の変更についての意見
2000.7月頃 松宮義晴教授を偲んで
2000.1.19
 生態系管理/答えが出てからでは遅すぎる
2000.1.14 愛知万博環境影響評価書に対する意見
新年の挨拶


2000.1.1

2000 明けましておめでとうございます。
 旧年中はたいへんお世話になりました。
 Y2Kによる被害は、いまのところおおむね常識的な範囲であり、ほっとしました。これは大掛かりな対策を講じたせいでもありますが、個人の備えとして、不測の事態に備えて年越しの飛行機には乗らない、(本来普段からすべき)停電や断水、震災への備え、計算機情報の待避など一週間程度の備蓄をしておくという方針は妥当だったと自己評価しています。中には3ヶ月の備蓄を勧めるなど、行き過ぎのような意見も目立ちました。 リスクはゼロにはできないが、かなり小さなリスクに対して万全の備えをすべきであり、小さくても市民に危険を周知すべきであるというリスク管理の考え方に、まだまだ世間はなれていないのではないかと思います。
 環境影響評価法の施行、鳥獣保護法「改正」など、1999年には環境問題で大きな変化がありました。
 愛知万博アセスではオオタカが会場内に営巣して会場計画が大きく変わりました。北海道のエゾシカ保護管理計画では1998年にメスジカを3万数千頭も捕獲し、密集地帯では減少の兆しが見えてきました。北海道の皆様の英断のもと、日本で始めてのフィードバック管理の実例が答えを出しつつあります。鉛弾によるオオワシとオジロワシの被害などへの対策の目処も見えてきました。
 6月から7月にかけて英国ケンブリッジで国際自然保護連合(IUCN)の研究集会が開かれ、絶滅危惧生物(レッドリスト)の判定基準の見なおしについて議論しました。情報が足りないものは既存の判定基準でもよいが、より多くの情報がわかった生物については絶滅リスクによる評価を優先すべきであるという私たちの主張は1/3ほどの参加者の賛成にとどまり、認められませんでした。
 11月にはダム水源地センターに誘われて米国の猛禽類生態研究諸施設の視察団に参加し、ワシントンDC、フィラデルフィア、ミネアポリス、ボイジー、サンフランシスコをめぐりました。
 去年は、海洋研当部門の院生が4人に増え、ようやく活気が出てきました。海洋研での教育に加え、東大農学部「水圏生態学」工学部「システムプランニング」立教大学、北大院農、農工大などで講義を行いました。今年もいくつかの大学に出張講義をする予定です。
 今年もよろしくお願いいたします。2000年1月


1999

1999.期日不明 米国における猛禽類の保全について=環境化学物質と生態系管理をめぐって=
1999.8.27 野生生物保護管理の基本的な性格と特徴
1999.6.22 万博会場予定地の種子植物絶滅リスク評価
1999.2.12 「海上の森ボーリング工事と環境影響評価についての質問書」に対する回答
1999.1.1 新年の挨拶


1999.1.1
1999 昨年父が亡くなり、喪中にて失礼します。
 昨年は、以下のことをやりました。
1) エゾシカ保護管理計画
2) 植物の絶滅の恐れを定量的に評価
3) 愛知万博環境アセスメント
4) 琵琶湖セタシジミ回復計画

1)エゾシカ保護管理計画が実行に移され、論文もまとめました。研究者の描く方針を行政が取り上げる様子を実感できたことは、私の人生にとっても大きな経験でした。幕末に匹敵する時代の節目にあって、幕末の志士とはほど遠い天下り志向の官僚ばかり目にしていましたが、未来への展望と責任感をもった北海道の研究者や行政官と知り合えたことにかすかな光を見ました。
3)植物レッドデータブックでは絶滅の恐れ(リスク)を数理模型により定量的に評価することが徹底され、私も一役買うことができました。2000種に及ぶ日本の植物の個体数、分布域、減少率の基礎情報を使えば、各地の開発が及ぼす希少種への影響も定量的に評価することができます。2005年日本国際博覧会(愛知万博)の環境影響評価(アセスメント)の検討委員になった私はこの手法を使うよう提案しましたが、意外にも環境庁が後込みして実現しませんでした。里山の自然をどう評価し、どう守るのか、この「日本固有」の問題に対し、私が今まで手がけてきた数理生態学はほとんど役に立ちませんでした(岩波「科学」8月号)。昨春の生態学会では自由集会で愛知万博問題を取り上げ、委員として情報公開と合意形成の仲介をする新たな役割を示すことができました。北米の生態系管理と順応管理について学び、その手法を日本に紹介することにしました。日本を代表する保全生態学者である筑波大学の鷲谷いづみ助教授と共著で昨年末の「応用生態工学」創刊号に「生態系管理および環境影響評価に関する保全生態学からの提言(案)」をまとめ、今年3月の生態学会ではそれに応える数理模型の自由集会を企てています。万博アセスメントは今年施行される環境影響評価法の先例になることという閣議了解があり、会場候補地自身の自然を守ることと同時に、環境影響評価の手続き自身が問われています。ところがアセスメント中に大規模なボーリング調査を行うなど、アセスメントを軽視すると見られる動きがあり、年末の12月27日には4名の委員とともに現地を自主視察して愛知県と保護団体の双方から意見を聞く機会を作りました。
4)琵琶湖のセタシジミはこの四半世紀に漁獲量が6000トンから200トン以下に落ち込みました。淡水真珠母貝であるイケチョウガイは1992年に2kgの漁獲量を記録したのを最後に漁業がなくなり、今や琵琶湖全体で1万個体以下でほとんど若い個体がいないという絶滅の危機に瀕しています。滋賀県水産試験場の研究者が頑張ってセタシジミ漁の網目を大きくし、子供を獲らないようにするよう県と漁協を説得しています。彼の熱意を援護するため、網目を大きくした場合のセタシジミ回復予測の数理模型を考えました。漁業者に過度の期待を抱かせることはできませんが、このままじり貧になるよりも1年我慢してじり貧をくい止め、数年後に子供の貝が増え始めて回復することが期待できます。琵琶湖は世界でも有数の古代湖であり、固有種に恵まれ、漁業も盛んです。しかし、湖岸開発による生息地破壊、公害と富栄養化、乱獲、ブルーギルとオオクチバスなどの外来種の大発生という環境問題に悩まされています。琵琶湖の生態系を守るための研究者と市民の輪を広げるために今年は力を注ぎたいと思います。
 本年もどうぞよろしくお願いします。